「営業職の働き方改革」成功のカギは社内の制度改善!
日本の政府が「働き方改革」を推奨しており、その言葉を耳にする機会も増えたように感じます。
しかし、働き方改革と一口に言っても、「長時間労働の更正」や「女性の労働参加」「在宅勤務の推進」など企業や職種によって取り組み方が異なります。少しでも働きやすくするために、様々な企業がいろいろな取り組みを行っています。
営業職は商談だけではなく、見積書の作成やメールの返信など事務作業も必要とされることが多く、社内での業務も多いため残業時間が長くなる傾向があります。
営業で働く人にとって働きやすい職場にするには、どのような働き方改革に取り組めば良いのでしょうか。
ここでは、営業職にとっての社内制度の改善について考えていきます。
営業職の働き方改革は企業発展の機会となる
営業の仕事は、クライアントからの突発的な要望の対応、開発や企画などの社内の関係部署の調整、報告書の作成など、仕事が非常に幅広いことが特徴です。
売り上げ目標を達成するために新規開拓や既存顧客への営業活動がメインですが、事前に商談において必要な資料を作成し、商談が終わればマネージャーに営業活動の報告をする必要があります。
このように、営業で働く人の1日は、「営業」だけでなく、準備・報告・会議・移動といったものに様々な時間を費やしています。
多くの労働力と時間が必要とされるため、営業職は残業の慢性化や人員不足になりやすく、働き方改革を進めるのは難しいとされています。
しかし、これらの業務の中には、見直すことで労働生産性を向上できるヒントが数多く存在しています。
社内のルール作りや意識改革、社内業務の効率化を目指して取り組むことで、営業で働く人が働きやすい職場になるだけでなく、企業の発展に繋がる絶好の機会だとも考えられます。
営業職の働き方改革が難しい理由
働き方改革によって、労働者が働きやすい環境の構築が叫ばれている今、営業職については業務を改善するのは難しいと感じる人も少なくありません。
その理由は、以下に挙げるような営業職ならではの特性があるからです。
理由①:お客様対応があるから
営業職のメイン業務ともいえる「お客様対応」。中には急な予定が入ってしまい、勤務時間外での商談などが行われることで、結果的に残業や休日出勤がやむを得ない状況になることもあります。
また、当日中に訪問しなければならないクライアントがある場合は、終業時刻を過ぎても働かなければならないというケースも良くある話です。
加えて、営業職では歩合給の制度がある企業も多く、結果的にストイックに仕事をし過ぎてしまい、企業によってはタイムカードを切らずに働き続ける社員がいるほどです。
このように、営業職はまずお客様対応に専念しなければならないため、決められた労働時間内で業務を終わらせることは困難とされています。
理由②:提案資料の作成、請求書作成など業務量が多いから
営業職は、商談のためにクライアントのオフィスに訪問します。
1件の商談を行うためには、クライアントへのアポイントメントの取得から、商談の資料作成、見積もりや請求書作成、報告書の作成といった業務を行う必要が出てきます。
クライアントとの商談時間や移動時間外にこれらの業務をこなす必要があります。商談や移動時間が長い日は勤務時間内では収まらず、残業や自宅への持ち帰りが起きやすいと言えます。
さらに、上司や管理職から見ても、営業で働く人が外出先でどのような活動をしているか不明慮なため、商談後には「報告書作成」「情報共有」などが求められます。
商談後に事務作業と社内への報告を行ってから、やっと一日を終えることができます。
このように、営業職は「社内業務」にも多くの労働時間をかけていることが分かります。
営業で働く人が内勤業務に追われると、営業の機会損失に繋がる
営業職の社内業務には、訪問時の資料作成や会議、上司への報告など様々です。
1日のスケジュールを見てみても、多くの企業では、労働時間の半分を資料作成と会議に使っていると言われています。
商談後は、報告業務のために帰社しなければならず、報告書の作成や情報共有を行ってから、やっと一日を終えることができます。
営業で働く人は、商談によって成果を上げることで企業発展に重要な役割を持っていますが、このような働き方では、商談の機会を損なってしまっています。
それでも商談を無理に詰め込もうとすると、業務量が追い付かず、人手不足や残業を招いてしまいます。営業職の働き方改革が難しいと言われる理由には、営業ならではの膨大な業務内容が関係していると言えるでしょう。
営業職は「属人化」の解消が必要
ビジネスにおいて「属人化」という言葉をご存知でしょうか?
「属人化」とは、企業などにおいてある業務を特定の人が担当することで、その人にしかやり方が分からない状態になることです。
これを営業職に当てはめると、営業担当者それぞれのコツやノウハウ、経験、モチベーションなどによって、売り上げが左右されてしまうといった状態と言えます。
営業職が属人化してしまうと、以下のようなデメリットが生じます。
・個人が築き上げてきた営業活動のノウハウが社内に共有されない
・営業活動を分析して、改善策を考案できない
・新人教育に時間がかかる
・担当が異動や退職した後、顧客との引継ぎが上手くいかない
このように、企業に勤めているにもかかわらず、個人で営業している状態と変わらず、会社としてのチーム力を発揮することができないようになります。
これは、企業の発展においてもメリットではないことが分かります。
なぜ営業職は属人化しやすいのか?
では、なぜ営業職は属人化に陥りやすいのでしょうか?
属人化してしまう理由には、以下が考えられます。
①自分の仕事で手一杯
②ノウハウを守りたい
③属人化を防ぐ対策がない
まず単純に考えられるのは、「忙しすぎて情報やノウハウを共有する暇がない」という状態です。「教えたくない」という意志がなくても、手一杯の時は「自分でやる方が早い」との判断し、周囲の人に仕事を振り分けることなく、後輩にも教育せずに自分だけで仕事を終えてしまうかもしれません。
また、②については、自分が積み上げてきた営業のノウハウを他の人に教えたくないというケースです。売り上げ実績が自分よりも高くなることで、給与やボーナスが上がらなかったリ、相手を優位に立たせてしまうという恐れがあるからです。
このような状況を生み出してしまうのは、やはり「属人化を防ぐ対策が設けられていない」からと言えます。
属人化を解消するためにできること
属人化を解消し、社内で情報共有してチームで助け合うためには、個人の意識改革も重要です。
しかし、個人の意識を変えるのはなかなか難しいことです。
解消するためには以下のように業務を見直してみるのはいかがでしょうか。
①営業プロセスを明確にする
②管理・共有するデータを決める
③情報共有しやすい空気づくりをする
属人化を解消するためには、まずは「目に見えてなかった情報を明確にする」ということから始めることが推奨されています。
顧客データや目標だけでなく、「いつ誰と」「どんな案件で」「どんな処理をしたか」をデータ化するのが効果的です。
さらに、「メールの送り方」「商談のときのアプローチ方法」「効果的なフレーズ」などの営業のプロセスを言語化するといった方法もあります。
実際に成果を上げている人のノウハウを他の従業員に共有することで、これまで成果を上げられなかった従業員の教育にも役立ちます。
また、情報共有することでモチベーションに繋がるような空気づくりができれば、より属人化を解消しやすくなるでしょう。
営業職の業務制度を見直し、効率アップを目指す
営業職の仕事は、顧客とのやり取りがメインです。しかし、上記で述べたように、不随する業務が多数存在していることから、業務効率の悪化に繋がっています。
営業職でより働きやすく効率的に業務をこなすためには、これまでの業務制度を見直す必要があります。
①即効性のある「ICT化」を進める
業務改善のひとつとして挙げられるのは、ICTの活用です。
ICTの活用方法としては、文章や企画書の作成だけでなく、以下のような活用方法が挙げられます。
・営業へのタブレット活用
・顧客リストや在庫の管理
・クラウドサービスの活用で、移動中でもPC作業が可能
・グループウェアの活用で、社外でも日程調整や情報共有が可能
・SFAやCRMなどで基幹システムに社外からアクセス可能
このように、これまでは社内に帰ってから情報共有や入力が必要だった業務も、このようなICTを活用することで手間と時間を大幅に削減することが期待されます。
商談中に基幹システムにアクセスし在庫状況が確認できたり、チームとスマホで情報共有や会議の日程調整ができたり、移動中でも資料作成ができたりなど。
仕事をする上で、場所や時間が柔軟に活用できることから、商談にかけられる時間を増やすことができます。
②事務作業は事務スタッフに依頼する
営業職の仕事では、社内業務が多くを占めているケースが少なくありません。
しかし、利益を得るための「顧客との商談」の機会が減ることは、企業として避けるべきです。
営業に専念するためには、事務スタッフに見積もりや請求書の作成、会議の資料作成などを依頼するなどして、業務を分担することも業務効率化を図る方法の一つです。
事務スタッフと営業担当の連携が上手く取れるまでは時間がかかるかもしれませんが、事務スタッフとチームワークを構築することで、手一杯の仕事を抱えてしまうことを防ぐことができます。
仕事を分担して効率よく業務を行うことで、商談に専念できるため、より質の高い営業へと繋がるでしょう。
③会議は必要最低限にする
多くの企業では、午前中に会議や報告をし、1日のスケジュールや流れを決めることがあると思います。
しかし、商談を控えている営業担当者とっては、午前中には準備することが山詰みです。
そのため、会議は必要な従業員のみで行うことも良いでしょう。
中には、「社員は全員参加」とあらかじめ決められている会議もありますが、これは関係のない営業担当者にとっては無駄な時間となるため、効率的とは言えません。
また、会議については「テレビ会議」の導入も方法のひとつです。
移動先や現地付近などでテレビ会議ができれば、有効に移動時間を活用できます。
例えば、会議後すぐに商談の予定が入っている場合、移動先でテレビ会議を行うことができれば、わざわざ出社する時間と手間を節約できます。
④外回りが多い日は「直行直帰」を許可する
企業の中には、出社前や退社時に部署の統制が取れないことを理由に、「直行直帰」を原則として認めていないところも少なくありません。
しかし、過密なスケジュールの中で外回りを行っている営業担当者が毎度会社に戻ることは、時間や体力を必要以上に消費します。
業務効率を上げるためにも、特に外回りが多い場合や、出勤、退勤時間に近い商談が入っている場合は、「直行直帰」を許可する方が、利便性が高いと言えます。
最近では、インターネットの共有ソフトなどを活用して、社外でも社内との通信手段が取れるようにすることで、直行直帰を認める会社も珍しくなくなっています。
このように、柔軟に直行直帰を受け入れることで、残業の慢性化や過重労働を防ぐことにも繋がります。
業務効率だけではない!健康管理も重要
営業職における働き方改革を考えるとき、上記で述べたような業務改善を行うだけでは、根本的な働き方改革とは言えません。
業務効率を上げて労働生産性を高めることも重要ですが、そのためには「従業員の健康管理」が欠かせません。
営業職は特に長時間労働になりやすく顧客と対面して関わるため、体力的にも精神的にも健康に影響しやすい職種と言えます。
従業員が心身ともにストレスを抱えた状態であると「モチベーションの低下」「集中力の低下」を引き起こし、結果的にパフォーマンスが低下します。
このように、従業員が不健康であることは、働き方改革が上手く成功しない要因となります。
営業職に多い健康問題とは?
営業で働く人が陥りやすい健康問題は、大きく分けて2つ。「生活習慣の乱れ」「精神的ストレス」です。
まず「生活習慣の乱れ」についてです。
営業で働く人は、商談から社内業務などの幅広い業務をこなさなければならず、残業時間が長くなりやすいと言えます。
そのため、「睡眠不足」となり、結果的に体力が弱って風邪をひきやすいという問題があります。
さらに、営業職の人は商談との時間で1日のスケジュールが決まるので、きちんとした昼食を取れないこともあります。コンビニのおにぎりで済ませ、夜遅くて食べない、といったような食生活の乱れが続くと、体調を崩してしまう要因となります。
次に「精神的ストレス」です。
営業職の人は、直接顧客と対面するお仕事です。
そのため、先方とトラブルになり、クレームが起きてしまうこともあるでしょう。そのせいで、慢性的なストレスを抱えているかもしれません。
他にも、
・営業の「目標数字」を意識しすぎることへのプレッシャー
・残業によって1日の終わりにストレスを発散できない環境にある
・仕事に手一杯でプライベートを充実できない
これらの理由から、精神的にストレスを感じる人もいます。
健康面でのサポートは必要不可欠
よい仕事をする上で、「体と心が健康」であることが欠かせません。
仕事へのパフォーマンス力が上がるだけでなく、健康的な営業で働く人は顧客からの印象も良くなることが期待されます。
従業員の健康管理をサポートする具体的な取り組みには、
・健康診断
・ストレスチェックの実施
・休憩時間、休日の確保
・女性の働きやすい制度
これらが挙げられます。
従業員がモチベーションを持って仕事に取り組めるよう、企業側から健康増進のサポートを積極的に行うことが大切です。
健康は企業にとってメリットとなる
働き方改革を根本的に見直すためには、就業環境を正しく整えることに加え、従業員の健康管理をサポートすることが大切です。
従業員が健康になれば、営業へのモチベーションアップ、集中力アップに繋がり、社内のチームワークも構築しやすくなります。そうすれば企業としての発展にも大きく関わってきます。
営業職は、過重労働やストレスなどで人員不足になりやすい職種です。
そのため他の職種よりも、より健康管理に力を入れることがおすすめです。
まとめ
営業で働く人の働き方改革について、注目するべき問題点をご紹介しました。
長時間労働や慢性的ストレスが問題視されやすい営業職にとって、働き方改革はすぐにでも取り組むべきです。
企業に求められている改善点をまとめると、
・業務制度を見直す
・業務効率を上げる施策を取り入れる
・多様な働き方を柔軟に受け入れる
・健康管理をサポートする
となります。
これらを見直すことは、会社にとっても、従業員にとってもメリットとなります。
営業職の不安を解消できるよう、働き方改革に取り組んでみるのはいかがでしょうか。