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「健康経営」このままで大丈夫?女性視点から見える企業活性化への道

従業員の健康をサポートがすることが、企業にもプラスの効果を与えるとされている“健康経営”。

長時間労働や過労による心身不調が問題視されている現代において、政府、そして多くの企業が健康経営の発展に力を入れています。


そんななか、近年では女性の社会進出が進んでおり、企業で働く女性の割合が増えてきています。女性のさらなる活躍に向けた健康経営に焦点を当てることは、企業の活性化において重要な位置づけになってくるでしょう。


本記事では、働く女性のための健康経営の在り方を考えるとともに、具体的な施策案について解説します。


目次[非表示]

  1. 1.働く女性の増加
    1. 1.1.女性の就業率が上昇する背景とは
    2. 1.2.女性が働きやすい職場づくりとは
    3. 1.3.女性の健康経営が目指すもの
  2. 2.働き手の視点から分かること
    1. 2.1.認知度への課題
    2. 2.2.女性特有の健康課題について
    3. 2.3.制度やサポートの動向について
  3. 3.ウィメンズヘルスリテラシー向上を目指して
    1. 3.1.企業としての理解
    2. 3.2.女性従業員自身の理解
  4. 4.具体的な施策例
    1. 4.1.女性のライフイベントに焦点を当てた施策例
    2. 4.2.女性特有の健康課題に向けた施策例
  5. 5.まとめ


働く女性の増加

1980年代頃の日本では、夫婦のうち男性が主な働き手となり、女性は家事や育児に専念するという片働き世帯が主流でした。就業していても、結婚や出産を機に退職する女性が多く見られていました。


しかし近年、共働き世帯は右肩上がりの増加が続いており、減少し続ける片働き世帯との差は大きく広がりつつあります。特に20代後半から30代前半にかけての就業率が上昇しており、結婚や育児をしながら働きたいという女性が増えているものと考えられます。


女性の就業率が上昇する背景とは

女性の就業率が上昇する背景には、結婚や育児といったライフステージの変化が挙げられます。


いわゆる第一次ベビーブーム世代と呼ばれる方たちが25歳前後の年齢に達した1970年頃をピークに、婚姻率は低迷が続いています。2016年の時点では過去最低となり、1970年代前半と比べて半分の水準となっています。


さらに、50歳時点での未婚率も男女ともに増加、平均初婚年齢についても上昇傾向です。平均初婚年齢は、1975年では夫が27.0歳、妻が24.7歳だったのに対し、2016年には夫が31.1歳、29.4歳と晩婚化が顕著となっています。


晩婚化の影響は晩産化を後押しするものとなり、同時に出生児数にも減少が見られます。婚姻期間が15年~19年の初婚夫婦の平均出生児数は、1970年から2002年頃までは平均2.2人だったのに対し、2005年から減少が始まり、2015年には1.94人となっています。


近年、女性就業率が増加している背景としては、女性の晩婚化や晩産化が少なからず影響しており、結婚や出産後も就業を続けたい、あるいは未婚化の進行によって長期的に働きたいという女性が増えているという見方ができるでしょう。


(出典:内閣府「少子化対策の現状(第1章3)」/国土交通省「女性の就業状況の変化」)


女性が働きやすい職場づくりとは

結婚や妊娠をする以前から就業していた女性の就業状況の変化を見てみると、結婚後に就業を続ける女性の割合は上昇しているものの、出産後も就業を続けている女性の割合は、1980年代頃から横ばいとなっています。


また、雇用形態別に関しては、20代後半から30代にかけての就業率が上昇していますが、正社員よりもパートタイマーやアルバイトといった非正規雇用の増加が大きいことがわかっています。


女性のライフステージの変化にともなって就業率は上昇しているものの、出産後も仕事を続ける女性の割合はほとんど変化がなく、また、労働条件を柔軟に選びやすい非正規雇用が増えていることからも、依然として仕事と子育ての両立が難しい状況であるといえます。


少子高齢化が進む現代において、人手不足は深刻な問題となっています。

女性従業員に長く活躍してもらうためには、女性のライフステージに柔軟に対応できる体制づくりが重要だといえるでしょう。


(出典:国土交通省「女性の就業状況の変化」)


女性の健康経営が目指すもの

少子高齢化による労働力不足が避けられない問題となっているいま、多くの企業で人材確保や生産性向上を図るための“健康経営”へ目を向けています。


現在の日本では、企業における女性の雇用者数は年々増加傾向にあり、働く人の約40%以上が女性といわれています。

重要な働き手となっている女性の健康を支える施策は、企業戦略において大きな役割を担うことになりそうです。


経済産業省によると、女性特有の月経症状などによる労働損失は4,911億円と報告されていることからも、生産性向上を目指すにあたって、女性の健康は見過ごせない議題といえるでしょう。

(出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」)


女性にとっては、出産後も仕事を続けたいという意思はあるものの、育児や家事との両立が難しいことや、女性特有の健康状況によって離職を余儀なくされることも少なくありません。


女性が長く活躍できる労働環境を整えるためには、結婚や出産といったライフイベントへの柔軟な対応をはじめ、女性の健康について雇用側が正しく理解し、積極的なサポート体制を設けることが重要といえるでしょう。



働き手の視点から分かること

女性特有の健康課題について、企業がどれほど認知しているかという調査、“「働く女性の健康推進」に関する実態調査”が経済産業省によって行われました。

女性に対する健康経営の施策にあたって、こういった実態調査の結果を踏まえた取り組みは大切になってきます。


認知度への課題

「働く女性の健康推進」に関する実態調査の結果、次の4つの課題が浮き彫りになったとされています。


  • 従業員や管理者における、女性の健康に対するリテラシーが不足している
  • 女性の健康に関する窓口等環境づくりが必要である
  • 女性の健康課題へのエビデンスデータの収集・共有をする体制が不充分である
  • 女性の健康推進に向けた目標設定等の対応が不充分である


女性の健康経営を進めるうえで、これらの調査結果を受け止めて、企業内でいかに認知度を上げるかが課題です。


(出典:経済産業省「『働く女性の健康推進』に関する実態調査」)


女性特有の健康課題について

女性のための健康経営を考えるにあたって、女性視点に立った施策の検討が重要になってきます。そのためには、まず女性の健康課題についての把握が必要です。


同調査では、以下、女性特有の健康課題や症状において、女性従業員に対しての意識調査を行っています。


  • 月経関連の症状や疾病
  • PMS(月経前症候群)
  • 女性のがん・女性に多いがん
  • メンタルヘルス
  • 更年期障がい
  • 不妊・妊活


この調査によると、「女性特有の健康課題や症状で困った経験があるかどうか」という質問に対し、半数以上の女性が「何かしらの困った経験をしている」と回答しています。


具体的な症状としては、月経関連の症状や疫病(36.9%)やPMS(23.5)が目立っており、20代の若年層は月経関連が48.3%、50歳以上では更年期障がいが23.5%と高い割合を占める結果となりました。


また、職場において「女性特有の健康課題が原因で何かを諦めた経験がある」と答えた女性については全体の42.5%となり、その健康課題の要因としては「妊娠や出産に関する症状や疾病」が最も多く、次いで月経関連、メンタルヘルスという結果となりました。


次に、こういった経験から「女性がどのようなサービスを必要と感じたか」という質問に対しては、以下の回答が挙げられています。


  • 業務の分担や人員配置のサポート
  • 医療機関の受診や検診、治療のための休暇制度と柔軟な勤務形態
  • 部署内でのコミュニケーション
  • 総務部や人事部からのサポート


女性従業員は、上記で述べた女性特有の健康課題において、職場からのサポートが必要と感じており、なかには健康課題や疾病によって退職を考える女性もいることがわかりました。


女性が本当に必要とする施策を取り入れ、健康課題と向き合えるような企業の体制づくりが重要といえます。


(出典:経済産業省「『働く女性の健康推進』に関する実態調査」)


制度やサポートの動向について

経済産業省が報告した健康経営に関する企業調査では、企業における女性の健康課題への対応について、サポート制度や整備状況が充分でないことがわかっています。


女性の社会進出や両立支援を目指したワークライフバランス関連の施策は比較的進んでいるのに対して、女性特有の健康支援に関する施策はあまり成されていないのが現状です。


また、サポートが浸透しない要因として挙げられるのは、女性従業員が会社に求めるサポートと、管理職が女性の健康課題への対応として考えているサポートの意識に相違がある点です。


女性従業員は必要な健康サポートとして「業務分担や適切な人員などのサポート」を重視しているのに対し、管理職では「産婦人医やカウンセラーなどの専門家による相談窓口」という回答が最も多い結果となっています。


女性特有の症状は男性にとって理解し難いのが現実ですが、こういった相違をうめることが大切になってくるでしょう。


(出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」)


ウィメンズヘルスリテラシー向上を目指して

女性活躍社会ともいわれている現代ですが、前述のとおり、働く女性への健康理解はまだ充分とはいえず、生産性に女性の健康課題が影響するということも、役職や性別を問わず、理解が不足しているという状況です。

生産性向上や人材確保という観点からも、女性のヘルスリテラシー向上が望まれます。


企業としての理解

健康促進のための企業の取り組みとしては、これまで男性に向けたメタボリックシンドローム対策などが一般的でしたが、女性の従業員数が増加している現在では、男女両方に目を向けた健康経営を考える必要があります。


管理職を含む男女を対象に行った調査では、「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響」として挙げられたもののうち、女性特有の症状であるPMSが3位となっています。

この結果を踏まえても、企業の労働力確保や生産性向上を目指すにあたってウィメンズヘルスリテラシー向上の必要性が高いといえます。


社内全体で女性の健康と体に関する研修を行うなどして、積極的に女性の健康への理解を深めてもらう取り組みが必要です。

こういった研修を継続的に行うことで、リテラシー向上へとつながるでしょう。


女性従業員自身の理解

女性の健康課題を理解するうえで、企業や男性目線の認識向上はもちろん重要です。しかし、女性自身が自分たちの健康を守るための対処方法を理解することも、健康経営の課題といえます。


たとえば、月経に対する症状は女性のなかでも個人差があり、妊娠・出産期間の体調変化、不妊治療に対する意識なども人によってさまざまです。

企業で定められている休暇制度を活用するにあたっても、症状や考え方が違うという理由から「休みを取りづらい」と感じる人もいるでしょう。


大切なのは、自分の体を基準と考えず、健康課題は人によって異なるということを理解することです。各自治体や企業が開催しているセミナーへの参加もリテラシー向上に効果的です。



具体的な施策例

女性の健康促進に向けた施策は、妊娠や出産などライフイベントの悩みを解消するものから、女性特有の症状や疾病などに対する健康支援サポート、育児や介護などの両立を支援する休暇制度などさまざまです。


女性のライフイベントに焦点を当てた施策例

妊娠や出産、子育てなどのライフイベントを支える施策例としては、休暇制度や人的なサポートが挙げられます。


◆休暇制度

  • 産前産後の休暇
  • 不妊治療のための休暇


◆人的サポート

  • 育児休業前の面談
  • 育児休業後の研修
  • 婦人科に関わる相談環境の整備
  • 産前産後のメンタルケア
  • キャリア支援


出産や育児に関する法定休暇を取得しやすい環境整備とともに、休暇前後に業務研修や面談を取り入れると、復職への不安解消が期待できます。


女性特有の健康課題に向けた施策例

月経やメンタルヘルスの不調など女性に多い健康課題の施策例としては、休暇や業務サポートに関する制度のほかにも、医療機関での検診補助や、社内のコミュニケーション促進に向けた施策などが挙げられます。


◆休暇と業務サポートに関する制度

  • 治療や受診のための休暇制度
  • 月経休暇
  • 柔軟な働き方ができる勤務形態
  • テレワークの整備


◆医療機関での受診制度

  • 婦人科検診費用の支給
  • 乳がんや子宮頸がんなどの受診補助
  • 定期健康診断に加えて、婦人科検診の実施


◆社内コミュニケーションに向けた施策

  • ヘルスリテラシー向上に向けた社内研修の実施
  • 女性従業員同士の理解を深める機会の設定
  • 相談窓口の設置


女性特有の健康課題をサポートするためには、社内で業務サポートができる環境を整えたり、健康状態に合わせて働き方が選択できるような勤務形態を用意したりすることが重要といえます。



まとめ

女性の活躍が企業にとってひとつの戦力となっているいま、女性の健康に配慮した取り組みは欠かせなくなっています。

女性は、妊娠や出産などのライフイベントが多いことや、月経・PMSなど女性特有の症状で悩む人も少なくありません。


そして、女性特有の健康状況により離職に至ってしまうと、企業の労働力や生産性にも影響が出てきます。企業活性化のためには、健康経営を通じて女性が働きやすい職場環境づくりに努めることが大切だといえるでしょう。


まずは女性の健康への理解を深めるとともに、上司や同僚とが協力して業務のサポートを行う体制を整えていってはいかがでしょうか。

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