より良い企業を目指したい管理者の方へ。健康経営の取り組み方法と導入事例
近年、企業成長のために必要な取り組みのひとつとして、健康経営が注目されています。その背景には、企業を支える従業員の健康課題を改善するという狙いがあります。
従業員の健康を維持・促進することによって、企業の質も向上します。働き方改革の一環として、さまざまな福利厚生を設ける取り組みも大切ですが、従業員の健康に目を向けることも大切です。
本記事では、より良い企業を目指す管理者の方向けに、健康経営の取り組み方法とその事例について紹介します。
目次[非表示]
- 1.健康経営を行う目的
- 1.1.“健康経営”について
- 1.2.健康経営のメリット
- 1.2.1.①生産性の向上を見込める
- 1.2.2.②離職率の低下を目指せる
- 1.2.3.③企業イメージが向上する
- 2.導入の方法
- 2.1.押さえたいポイント
- 2.1.1.①従業員の健康状態について把握
- 2.1.2.②達成可能な目標を設定
- 2.1.3.③経営理念と方針に基づいているか確認
- 2.1.4.④施行後の評価と改善ができるようにしておく
- 2.1.5.⑤法令遵守とリスクマネジメントを怠らない
- 2.2.デメリットも存在する
- 2.2.1.①コストや手間がかかる
- 2.2.2.②健康に関する情報提供に不安を持つ従業員が存在する
- 2.2.3.③効果が見えにくい
- 3.“ホワイト500”の存在
- 4.多くの企業で取り入れられている施策
- 4.1.食事に関する取り組み
- 4.2.オフィスでの取り組み
- 4.3.コミュニケーション促進に向けた取り組み
- 4.4.医療面での取り組み
- 4.5.勤務体制についての取り組み
- 5.まとめ
健康経営を行う目的
一言で健康経営といっても、その概要はとても深いものです。
健康経営は企業にとって大切な取り組みとなりますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。また、社会全体で取り組む目的は何なのでしょうか。
まずは、健康経営とは何かという点から触れていきましょう。
“健康経営”について
健康経営とは、従業員の健康を経営的な視点で捉えて管理し、企業の業績アップを図る取り組みのことを指します。
企業を良くするための手段として、経営理念に則った健康投資を従業員に対して行い、従業員の健康維持と同時に、企業としての成長を目的としています。
従業員が健康を保つための取り組みであり、健康経営に関わる費用は、言わば企業の未来への投資です。
こういった取り組みを行うことにより、
- 従業員の心身の健康を図ることによって労災やミスのリスクが減る
- 医療費といったコストを削減できる
- 業務の生産性効率が向上する
- 企業の業績向上につながる
というフローを生み出すことが期待できます。
さらに、離職率の低減や組織としての満足度の向上、企業ブランドのイメージ向上が期待でき、企業が持続的に事業を展開するにあたり必要な活力を得ることもできます。
健康経営はこれからの企業経営や企業戦略にとって、ますます重要な事項になると考えられます。
健康経営のメリット
先述の通り、健康経営にはさまざまなメリットが存在します。
①生産性の向上を見込める
従業員の心身が健康に保たれると、業務ミスの軽減や業務スピードの上昇を望むことができ、結果としてパフォーマンスの向上を図ることができます。これにより、副次的に従業員同士の連携が強化され、生産性だけでなく業務における従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
また、労災による事故を低減させることも可能となります。人員不足や残業が減り、結果的に業務全体の生産性向上を目指せます。
②離職率の低下を目指せる
業務過多やストレスなどによる心身の不調は、ときに退職の要因となることもあります。こういった形での人員の損失は、ほかの従業員にも少なからず影響を及ぼし、離職率が上がってしまう要因にもなりえます。
反対に従業員の健康指数が高く、業務の負担が少ないと従業員の離職率は低下する傾向にあります。健康経営は企業の労働力損失を防止するという観点からも、重要な取り組みです。
③企業イメージが向上する
従業員が健康的に活躍できる企業になることで、企業イメージの向上を図れます。これにより、優秀な人材を確保しやすくなります。
また、健康経営の取り組みにおいて一定の基準を満たすと、経済産業省より“健康経営優良法人”として認定されます。この認定を受けると社会的な評価を受けることができるので、企業をアピールする有効な手段となります。
導入の方法
多くのメリットがある健康経営ですが、どのように導入すれば良いのか悩むことも多いことでしょう。企業の将来を見据えた投資となる取り組みとなるため、計画すべきポイントをしっかりと押さえておきたいところです。
押さえたいポイント
①従業員の健康状態について把握
企業内での課題を見つけ出すためには、まずは従業員の健康状態を把握する必要があります。健康診断のデータやここ最近の勤怠状況、離職した従業員の人事データなど、企業が保有しているデータだけでも調べることは可能です。
調査したデータから、自社の健康状態の傾向を導き出し、注力すべきポイントを見つけ出しましょう。
②達成可能な目標を設定
課題が見つかれば、改善するための達成可能な目標を設定します。無理のない裁量で行うことが効果の検証にもつながり、持続的に取り組みを進めることが容易になります。従業員が参加しやすく納得できる目標を設定することが、早期達成とモチベーションアップに直結する重要な鍵です。
③経営理念と方針に基づいているか確認
進めている健康経営が、企業の経営理念と方針に基づいているかを確認することも重要です。健康経営の取り組み内容が自社のスタイルに合っていなければ、効果は薄くなってしまいます。従業員が取り組みに対して疑問を抱くことにもなりますので、必ず確認しましょう。
④施行後の評価と改善ができるようにしておく
取り組みを持続するだけではなく、施行してみてどうだったか、どのような効果があったのかを管理者と従業員が把握することが大切です。特に管理者は、取り組みに関してのフィードバックを行い、次回試行するための改善策を詮索する必要があるでしょう。
⑤法令遵守とリスクマネジメントを怠らない
取り組みの際には、法令を遵守した方法で行いましょう。健康経営は方法を間違えると、期待とは逆の結果を招いてしまうことがあります。管理者がしっかりリスクマネジメントを行うことが重要です。
健康経営の取り組みには、それぞれに合った制度の導入を検討することがポイントとなります。管理者が主体となって、まずは従業員も参加できる無理のない設定を行ってみましょう。
デメリットも存在する
健康経営の導入にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。導入の際はデメリットの把握も行ったうえで、計画的に導入を進めましょう。
①コストや手間がかかる
管理者は、複数の部署を渡り歩きデータを集計しければならないため手間がかかりがちです。多少の費用はかかりますが、管理者の負担軽減は、外部委託や専門家を活用するという方法で解消することが可能です。
②健康に関する情報提供に不安を持つ従業員が存在する
健康診断のデータなど、個人情報の開示に抵抗のある従業員は一定数存在します。なかには、知られたくない健康状態を抱え、開示に不安を覚える従業員もいるでしょう。管理者は、こういったセンシティブな情報の管理を徹底して行う必要があります。情報の取扱いについて、事前に周知させることが重要です。
③効果が見えにくい
健康経営は、目に見える形で表れにくく、効果を実感するためには時間を要します。②と同様に、施行する健康経営についての情報を企業全体に知らせることにより、効果が見えずとも健康経営の必要性を伝えられるでしょう。
それぞれのデメリットは、社内での情報共有を徹底する・可視化するなどでカバーすることが可能です。未来の企業への投資と捉えて、積極的な導入を目指しましょう。
“ホワイト500”の存在
ホワイト500とは、別名“健康経営優良法人”のことで、一定の基準を満たすと経済産業省より認定されます。
認定されると「健康管理を戦略的に行っている会社」として社会的な評価を受けることができます。積極的に健康経営について取り組んでいる企業ということが可視化されるので、さまざまな効果が期待できます。
たとえば、従業員の職場への満足度向上、およびそれによる離職率の低減や、優秀な人材確保などのリクルート効果、企業そのもののイメージアップなどです。
健康経営に取り組む際は、ホワイト500の認定を目指した目標を設定することをおすすめします。
多くの企業で取り入れられている施策
現在健康経営に取り組んでいる企業では、どのような施策が取り入れられているのでしょうか。
実際に行われているさまざまな業界での健康経営について、触れてみましょう。
食事に関する取り組み
適切な食生活を送ることは、健康を保つうえで非常に大切です。この点に着目して、従業員の食生活をサポートする健康経営方法が存在します。
社内のレストランメニューを栄養士監修の健康メニューに変更して従業員に提供したり、栄養バランスのとれた弁当を宅配サービスで手配したりする企業は、近年増加傾向にあります。
そのほか、社内でビタミン剤やヨーグルトなど栄養価の高いものを取り揃えたり、自動販売機の飲料ラインナップを低脂肪かつ低糖なものに入れ替えたりという、細やかな健康経営を施策した企業もあるようです。
オフィスでの取り組み
オフィスは、従業員が勤務時間の多くを過ごす場所です。快適に業務を行えるよう、観葉植物を置いて緑化を図ったり、蛍光灯を目にやさしい色に変えたりすることも、健康経営の手法のひとつとなります。さらに、定期的にオフィスの清掃を行い、清潔を保つことも重要です。清掃を業者に任せず、従業員全体で行うようにすると運動不足の解消にもつながります。
そのほか、スタンディングデスクを設置して座りっぱなしの姿勢を改善したり、オフィスに休憩所を設けて従業員が体を動かせる環境を整えたりするという方法もあります。近年ではオフィスにバランスボールといった簡単なフィットネス器具を設置しているという企業も珍しくはありません。業務の間にリラックスできる時間を作ることで、業務効率をアップする効果を期待できるでしょう。
コミュニケーション促進に向けた取り組み
従業員間でコミュニケーションを取る機会を増やすことは、企業としてのチームパフォーマンス向上につながります。これを目的に、従業員同士で交流できるイベントを設けている企業が増えています。
従業員全員が参加できる旅行や飲み会の設定、運動会を企画する施策など、イベントの種類は多岐にわたります。大きなイベントでなくとも、全員でランチやおやつを共有する時間を設けるだけでも、充分なコミュニケーション促進を期待できるでしょう。
イベントやレクリエーションの企画が難しい場合は、社内報や社内新聞といった、従業員同士のコミュニケーションを発生させるツールを作成する方法もあります。社内の事情を良く観察して、無理のない程度で企画することが大切です。
医療面での取り組み
医療の面から従業員をサポートすることも重要な健康経営です。
健康診断を会社負担で義務化したり、社内を禁煙にしたりする企業は数多く見受けられます。健康診断を義務化する場合は、受診する時期が従業員の負担にならないよう考慮することがポイントです。また、インフルエンザ等の予防接種受診を徹底させるという手もあります。
そのような制度を取り入れるのが難しい場合には、社内のトイレまたは給湯室に、手洗い石鹸やうがい薬を設置し、健康への意識改善を従業員に促すことから始めるのも良いでしょう。オフィス内に血圧計のような機器を設けるなど、従業員自ら健康状態をチェックできる環境をつくることも可能です。
勤務体制についての取り組み
従業員の長時間労働問題は、企業問題として頻繁に取り上げられています。企業イメージのためだけでなく、従業員の健康維持を図るために、有給休暇を必ず取得、消化することを推進している企業は多いようです。
一方、特定の従業員が休暇を取っている間、ほかの従業員の負担が増す状態となる場合があります。そのような事態を避けるためには、従業員全員の休み希望と業務の進捗状況を把握・調整できる工程表を作成するという施策も有効です。
また、週に一日“ノー残業デー”を取り入れることも施策の一例として挙げられます。
まとめ
働き方改革が推進されている今日、健康経営の導入を考えている管理者の方は多いことと思われます。導入のためにも、まずは自社の状況把握をしましょう。自社にとっての課題を明確にして、従業員全員が参加できる達成可能な目標を導入することが重要です。ホワイト500を目標とすると、より良い健康経営の取り組みが可能となります。