その福利厚生、本当に必要?トレンドを取り入れて従業員満足度向上へ
福利厚生の導入は、採用活動や離職率改善に役立つといわれています。
近年では、家族形態の変化や働き方の多様化により、福利厚生へ求める従業員のニーズは変わりつつあります。
費用対効果の高い制度を導入するためには、従業員の要望を把握することとあわせて、福利厚生のトレンドを知ることも大切になってきます。
本記事では、福利厚生が企業にもたらすメリットや、近年のトレンドについて紹介します。
目次[非表示]
- 1.福利厚生で変わる企業の評価
- 2.福利厚生を充実するメリット
- 2.1.採用活動に有利
- 2.2.従業員満足度の向上による離職の防止
- 2.3.社会からの信頼性の向上
- 3.時代で変わる福利厚生のニーズ
- 3.1.法定外福利厚費の変動
- 3.2.福利厚生のトレンドトップ3
- 3.2.1.①ヘルスケアサポート
- 3.2.2.②両立支援関連
- 3.2.3.③自己啓発
- 4.従業員満足度の高い「カフェテリアプラン」とは
- 4.1.カフェテリアプラン導入の課題
- 5.まとめ
福利厚生で変わる企業の評価
福利厚生を充実させることは、企業の評価にプラスの効果をもたらします。
働き方改革によって労働環境の改善が求められているなか、充実した福利厚生は、社内外への大きなアピールポイントとなります。
リクルートキャリアが運営する「リクナビ」が行った、2019年卒の就活生を対象とした意識調査では、就職先を確定する際の決め手として「福利厚生や手当が充実している」ことと答えた人が全体の37.8%となり、全項目の2位にランクインしています。
なかでも女性は福利厚生の充実を求める割合が高く、全体の43.6%、全項目の3位に挙げられています。女性は結婚や出産など人生のライフイベントによって働き方が変わるため、福利厚生の充実が企業選びの大きな決め手となっているのでしょう。
(出典:リクルートキャリア「就活生、入社予定企業の決め手は?」)
このように、福利厚生の充実は、就活生の採用活動に良い結果をもたらすことがわかります。
福利厚生を経営課題のひとつとして考え、従業員にとって意義のある制度を導入する必要があります。人手不足下における今後の企業競争に、福利厚生の充実は必要不可欠といえるでしょう。
福利厚生を充実するメリット
福利厚生は企業が従業員の福祉向上のために提供する制度ですが、従業員だけでなく企業にとってもさまざまなメリットが期待できます。
採用活動に有利
前述の調査にもあったように、求職者は就職先選びの基準として福利厚生の充実度を重要視しています。
長時間労働や残業が問題視されている現代において、従業員の生活や健康に配慮した福利厚生を提供することは、従業員からの信頼度向上につながり、採用面でも有利になります。
また、ほかの企業にはない魅力的な福利厚生を導入することによって、同業他社との差別化を図ることも可能です。
採用活動での「採用時に人材が集まらない」「内定を出しても辞退される」という悩みを解消する手段のひとつとして、福利厚生の見直しという取り組みは重要なポイントとなるでしょう。
従業員満足度の向上による離職の防止
現在、多くの企業が人手不足に頭を悩ませています。
採用したもののすぐに離職してしまうという従業員も珍しくなく、限られた人材にいかに長く勤めてもらうかは大きな課題です。
その課題の解消策として、働きやすい労働環境の構築と、従業員のライフスタイルに合わせた福利厚生の導入が挙げられます。
これにより、従業員のモチベーションを高めることが期待できます。
働きやすい職場環境を整えることは離職防止にもつながるため、人材確保や定着率向上を目標としたときに、欠かせない取り組みといえるでしょう。
また、従業員のモチベーション向上は、業務効率にも良い影響を与えるといわれています。企業全体の生産性向上に加えて、従業員が企業に貢献しているという意識が強まることから、企業エンゲージメントの構築にも役立つでしょう。
社会からの信頼性の向上
長時間労働が招く心身の不調を防止するため、社会全体が労働環境の改善に目を向けています。働き方改革によって労務コンプライアンスが厳しくなってきてはいるものの、長年慣習化された業務体制を見直すことは容易ではありません。
一方、福利厚生は従業員の生活や健康面、働きやすさに直結する施策であることから、従業員が実感を得やすい取り組みといえます。
また、充実した福利厚生を提供することで、従業員を大切にする企業だという社内外からの評価を得られるだけでなく、ほかの企業からの信頼獲得にもつながります。福利厚生は従業員満足度に直結すると同時に、企業の強みとしてアピールできます。
時代で変わる福利厚生のニーズ
働き方の多様化が進むにつれて、求職者や従業員からの福利厚生に対するニーズも変わってきています。
現代の特徴としては、スキルアップを目指す支援制度や、プライベートとの両立に向けた休暇制度などが目立ってきています。
さらにもうひとつの側面として、健康意識への高まりが挙げられます。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が従業員を対象に行った調査によると、「勤務先での制度で特に必要性が高いもの」というアンケートに対して、最も多い割合を占めたのが「人間ドック受診の補助(21.8%)」となりました。
その次には「慶弔休暇制度(20.0%)」、そして「家賃補助や住宅手当の支給(18.7%)」が上位3つを占めていますが、「病気休職制度」や「リフレッシュ休暇制度」など、健康に対する休暇制度も全項目と比較して高い割合となっています。
(出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「福利厚生のトレンド」)
法定外福利厚費の変動
従業員のニーズの変化にともない、企業が負担する法定外福利厚生費にも変動が起きています。
法定外福利厚生費は過去20年の大きな動きを見ると減少傾向にあり、その要因として社会保険料の上昇などによる法定福利費の膨張が挙げられます。
また、減少傾向にある法定外福利厚生費のなかでも、内部の負担額は項目によって変動しています。
日本経済団体連合会の公表によると、近年上昇している法定外福利厚生費は次の3つです。
- 育児関連
- ヘルスケアサポート
- 文化・体育・レクリエーション活動への補助
女性の労働参加拡大が進むなか、女性が活躍できるために育児関連の制度を導入する企業が増えています。
また、ワークライフバランスといった働き方が注目されていることにより、従業員の生活をより豊かなものにするレクリエーション活動などの補助費用も増加しています。
ヘルスケアサポートついては、長時間労働による心身の不調が問題視されていることや、老後に対して不安を抱える人への対応により導入されており、従業員ニーズが高いことが分かります。
(出典:日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」)
福利厚生のトレンドトップ3
福利厚生の導入を考えるうえで、従業員のニーズを把握することは欠かせません。法定外福利厚生費の変動や従業員へのニーズ調査を踏まえて、トレンドの福利厚生を3つピックアップしてみました。
①ヘルスケアサポート
長時間労働による心身の不調が問題視されていることにより、従業員は企業がどのような健康経営に取り組んでいるのかを重視しています。
具体的な制度としては、人間ドックの受診補助をはじめ、健康診断の補助、ストレスチェックなどが挙げられます。政府が健康診断やストレスチェックの義務化を定めたことにより、さらなる健康経営への取り組み強化を目指す企業が増えてきています。
②両立支援関連
福利厚生のなかで従業員からのニーズが高いのは、育児や介護などの両立支援に関する制度です。特に女性からの要望が多く、出産や育児などによるライフステージへの変化に柔軟な対応ができる支援を求める傾向があります。
具体的な例としては、企業内での保育施設やベビーシッターの提供をはじめ、介護施設の提供、法定を上回る育児休暇や短時間制度などが挙げられます。
育児や介護等を理由とする離職を防ぐためには、従業員の仕事と私生活の両立をサポートする制度が不可欠といえます。
③自己啓発
自己啓発に関連する福利厚生が注目を集めている背景には、従業員が企業に勤めるうえでの目的意識の変化が関係しています。
これまでの就職活動では、就職後は定年まで同じ会社で勤めるという志向が一般的でしたが、近年の求職者は「自らの成長が期待できる」という意識が強く、年収や企業規模よりも自己成長ができる環境かどうかを重要視する傾向があります。
リクルートキャリアによる就活生への意識調査では、企業に自らの成長を求める理由として「セカンドキャリアを考えている」「仕事を通じて得られるものがある環境を選びたい」といった意見が挙げられています。自己啓発に関する福利厚生への投資は、従業員からの評価や満足度につながるといえるでしょう。
具体的な導入例としては、社内での自己啓発プログラムの実施や、自己啓発のための休暇やサービスの付与などが挙げられます。
(出典:リクルートキャリア「就活生、入社予定企業の決め手は?」)
従業員満足度の高い「カフェテリアプラン」とは
新たな福利厚生を導入するにはコストがかかります。そのため、従業員のニーズに応えたいという気持ちはあっても、すべての従業員が求める福利厚生を導入することは現実的に難しいでしょう。
そこで近年注目を集めている制度がカフェテリアプランです。
企業が設定した豊富な福利厚生のなかから、従業員が好きなメニューを選択できるというもので、多くの企業が導入を始めています。
その最大のメリットといえるのは、幅広い従業員のニーズに対応しやすいという点です。企業には、若手従業員や中堅従業員、子育てと両立している女性従業員など、さまざまな世代が在籍しています。
その分従業員のニーズは多種多様なものになりますが、特定の世代や性別を対象とした福利厚生の場合、利用できない従業員が現れてしまいます。
カフェテリアプランは、こういった不公平を無くし、従業員の誰もが好きなメニューを選択できるため、従業員同士の待遇差による不満が発生しづらいという利点があります。
多くの従業員にメニューを利用してもらうことにより、福利厚生にかかるコストの無駄を省き、従業員満足度の向上につながるとされています。
カフェテリアプラン導入の課題
カフェテリアプランを導入するにあたり、企業の課題となるのが運営によるコストと管理体制です。カフェテリアプランを導入する場合、法定外福利厚生費が増加するため、そのほかの福利厚生費とのコストバランスを考える必要が出てきます。
また、多くの従業員を抱える企業では、社内での管理が複雑となり、担当部署の業務負担が増えることも考慮する必要があります。
メニュー選択から利用までに手間がかかったり、処理にミスが発生してしまったりというトラブルを起こさないためにも、管理体制は必須となります。
こういったコスト調整と管理体制において対策案を考えることが大切です。
また、「人手が足りず自社で運営ができない」「ノウハウに自信がない」という場合には、アウトソーシングという手段も視野に入れると良いでしょう。
まとめ
従業員が企業に求めるものが変化してきている今は、福利厚生の見直しを図る時期といえます。
近年の福利厚生の傾向としては、健康経営の一環となるヘルスケアサポートや、育児や介護などと両立できるライフワークバランスを目指した制度が人気を集めています。そのほか、仕事にやりがいを求める従業員も多いことから、キャリアアップが目指せる自己啓発関連の制度にも需要が高まっています。
「年収よりも福利厚生を重視する」という求職者の意識調査結果からいえるように、充実した福利厚生は採用活動においても大きなアピール要素となるでしょう。