働き方改革の鍵となるオフィス環境。改善のポイントとは?
働き方改革を進めるうえで、企業のルールや労働条件の改善以外にも、従業員の満足度を高めることが求められています。
その改善策のひとつとして注目されているのが「オフィス環境の改善」です。従業員にとって毎日過ごすオフィス環境を見直すことが、働き方改革の満足度を高める第一歩へとなるのではないでしょうか。
実際に、多くの企業がオフィス移転などを機にオフィスの配置やレイアウトなどを変え、様々なワークスタイルを取り入れるようになっています。
本記事では、働き方改革におけるオフィス環境の重要性について考えていきます。
目次[非表示]
- 1.働き方改革ではオフィス環境も重要
- 2.具体的にオフィス環境をどのようにするか
- 2.1.業務に合わせたレイアウト
- 2.2.家具は機能性にもこだわる
- 2.3.デスクは収納力だけで決めない
- 2.4.椅子は従業員の疲労に大きく関わる
- 2.5.照明は従業員のモチベーションを左右する
- 2.6.休憩室は従業員の満足度を高める
- 3.オフィス環境改善のポイント
- 4.クリエイティブオフィスへの取り組み
- 4.1.クリエイティブオフィスとは
- 4.2.クリエイティブオフィスがもたらす効果
- 4.3.オフィスに設けるスペースの例
- 4.3.1.① 執務スペース
- 4.3.2.② 個人作業集中スペース
- 4.3.3.③ ワークショップスペース
- 4.3.4.④ブレストスペース
- 5.まとめ
働き方改革ではオフィス環境も重要
従業員が一日の大半を過ごすオフィス。「たかがオフィス…」と思われるかもしれませんが、そのオフィスを働きやすい環境に整えることは、企業の生産性に大きく影響すると言われています。
オフィスの作り方や使い方は業務内容にも密接に関わるため、デスクの配置やレイアウト、会議室は従業員にとって使いやすいものにすることにより、本来のパフォーマンスを最大限に発揮できる効果が期待されるでしょう。
ある企業が立ったまま業務ができる「スタンディングデスク」を導入した事例が、少し前に話題になりました。
毎日長時間座ったままでは、従業員の腰などに負担をかけていることがあります。立ったまま業務ができるようになったことで、腰痛に悩む従業員の負担を減らし、健康維持につなげる効果があったそうです。
従業員の健康維持を考慮することは、業務を進めるための大切な要素です。働きやすいオフィスを作ることで、従業員一人ひとりの生産性の向上にもつながります。
このようなオフィス環境の改善は、ここ数年間でますます加速しています。企業にとっても従業員にとっても大きなプラスと言えるでしょう。
狭い、暗い、といったオフィスでは業務効率が落ちる
オフィス環境の改善が働きやすさに直結すると説明しましたが、働きやすいオフィスとはどのようなものなのでしょうか。
働きやすいオフィスとは、第一に従業員が物理的に快適と感じられるかどうかです。オフィスが暗い、または狭いと仕事に対するモチベーションが上がらず、業務効率が下がりやすいと言われています。明るくて十分なスペースがある快適な空間であれば、自然と気持ちが前を向き、仕事もはかどりやすくなる効果が期待されます。
一方で、従業員にとって居心地が悪いオフィスは集中力の低下や、長時間過ごすことでストレスになることが懸念されてしまいます。
従業員が心地よいと感じるオフィス環境を作りは、従業員の不満やストレスを減らし、作業効率を上げるための有効な手段のひとつだと言えます。
オフィスの設備や収納方法が悪いと不満につながる
「どこに何が収納されているかわからない」「備品がなくなっているのに気が付かない」など、設備や収納がきちんとできていないことは、従業員にとってストレスの要因になっている可能性があります。
社内で収納場所が共有できていないことで業務が不便になるだけでなく、探し物をしている間の時間を無駄にしていることになります。
また、「ジャケットを掛ける場所がない」「傘立てがない」など、オフィス内の設備が不足している場合、従業員にとっては働きやすい環境とは言えないかもしれません。
ほんの些細な不満かもしれませんが、こういった従業員の小さな不満を解消することで、仕事に対しての意欲が高まり、時間を無駄にせず有効活用できます。
コミュニケーション設計も重要
働きやすい空間作りには「業務のしやすさ」も関係しているのではないでしょうか。
従業員が業務をよりスムーズ行えるような導線を確保して、上司や同僚とコミュニケーションが取りやすいデスク配置にするなど、業務内容や従業員のことを考えたデスク配置が重要といえます。
従業員がコミュニケーションを取りながら効率よく業務を行うことで、無駄な時間のカットにもつながります。さらには、従業員同士が気軽に話せる環境になることで、信頼関係が構築できるため、チームでの業務もスムーズになります。
具体的にオフィス環境をどのようにするか
具体的にどのようにすれば、働きやすいオフィス環境に改善できるのでしょうか?
これまで職場環境と言えば、空調や明るさなどの物理的な面に重きを置かれていました。しかし最近では、ストレス社会と言われる時代の流れによって、「人間関係」「健康」などの心に与える環境改善が求められる傾向にあるようです。
心に与える環境とは、「コミュニケーションが活発」「気分転換しやすい」などが挙げられます。
従業員がストレスを感じにくいオフィスに改善することで、業務への集中力や効率にも大きく影響するのではないでしょうか。
以下に、具体的なオフィス作りのポイントを挙げてみました。
業務に合わせたレイアウト
オフィスのレイアウトは、デスクの置き方やスペースの使い方によって、仕事の効率を左右する大きなポイントといえます。
従業員のコミュニケーション設計やモチベーション向上にも重要な関係があるため、業務内容に合わせたレイアウトを考える必要があるでしょう。
まずは、職種や部署の人数によって向いているレイアウトが異なるため、どのようなスタイルが自社や部署に合っているか検討してください。
■フリーアドレス型
配置:個人の固定席がなく、空いている席を自由に利用できる。
特徴:業務に新鮮味が生まれ、モチベーションアップやクリエイティブな発想のきっかけになります。部署外の人とのコミュニケーションも実現しやすいといったメリットがあります。
■ブース型
配置:デスクの周囲をパーティションで囲っており、独立している。
特徴:周囲の話し声や視線を遮ることができ、作業へ集中しやすくなるといったメリットがあります。プログラマーやクリエイティブ系の職種に向いています。
■島型
配置:部署ごとにデスクを対向させて配置する、最も一般的なレイアウト。
特徴:人員変動にも対応しやすく、部署内でコミュニケーションが取りやすいことがメリットといえます。すでに幅広い業種のオフィスで導入されています。
■同向型
配置:学校の机のように、同じ方向に向けてデスクを並べるレイアウト。
特徴:伝票や書類の受け渡しなどの流れ業務に沿って効率よく進められ、来客などの際に、デスクが外部の目に触れないことがメリットです。ただし、従業員同士のコミュニケーションを必要とする企画や開発部にはあまり向いていないと言えます。
■背面型
配置:1つの島の中で、左側が正面を向いて座り、右側が背面を向いて座る。
特徴:一体感がありつつも個人のプライバシーが保たれているため、さらに集中して業務に取り組みやすいメリットがあります。設計やデザインといったクリエイティブな職種にも採用されています。
家具は機能性にもこだわる
オフィス家具を選ぶとき、何を重視していますか?
ついコストを抑えることばかり考えてしまいがちですが、オフィス家具は一度購入したら簡単に買い換えるものではありません。
従業員が毎日使うデスクと椅子について考えてみましょう。一度壊れてしまっても、同じメーカーのものを購入するようになるため、オフィス移転や改装に伴う家具の入れ替えは、オフィス環境改善にとって重要なタイミングと言えます。
デスクは収納力だけで決めない
デスクは、オフィス全体の雰囲気を決める重要な要素といえます。デザインはすっきり見えるシンプルなものを選ぶと良いでしょう。
デザインにこだわり過ぎたデスクは、オフィス全体のバランスを整えるのが難しく、同じものを長年使い続けられるかがわからないためです。
また、機能性を重視して選ぶ際にも注意点があります。とにかく収納量を意識してしまいがちですが、収納力が高すぎると書類の所在がわからなくなり、人によっては整理整頓が行き届かず、デスクが散らかってしまう原因にもなります。
収納力は最低限必要ですが、書類立ての有無や、足元のスペースが十分に確保できているかを考慮しましょう。
椅子は従業員の疲労に大きく関わる
デスクワークが中心の従業員にとって、椅子の座り心地しだいで業務への取り組み方が変わります。デザインや値段で選んでしまうと、腰痛や肩こりの原因になり、業務効率が下がってしまうかもしれません。
腰への負担をできるだけ軽減するには、クッション性があるものや、背もたれのバネがしっかりしているもの、高さ調節機能の付いたものを選ぶとよろこばれるのではないでしょうか。
毎日使う椅子は、従業員の健康にも直結します。健康経営が重要視される昨今では、ストレスなく業務に取り組めるように、従業員の目線になって家具選びを行うことで、従業員の満足度も高くなることが期待されます。
照明は従業員のモチベーションを左右する
オフィスの照明選びは、従業員のモチベーションや作業効率にも大きく影響するため、オフィス環境改善において優先順位が高いといわれています。
オフィスには、従業員が業務を行う作業スペースの他にも、エントランス、会議室、休憩室などがありますが、ここで重要なのは「空間の目的に合った照明を選ぶこと」です。
照明には、大きく分けて「昼光色」「昼白色」「電球色」の3色がありますが、それぞれ色によって人に与える効果が異なることをご存じでしょうか。
■昼光色
色:青みがかった白で、3つの中で最も明るい
効果:脳を覚醒する効果があるとされ、集中力を高めると言われている
■昼白色
色:太陽の明るさに近い自然の光の色
効果:生き生きと明るい雰囲気、昼光色よりも暖かみがある
■電球色
色:オレンジがかった暖色系で、暖かみがある色
効果:明るさが控えめなため目が疲れにくく、リラックス効果がある。料理を美しく魅せる色ともいわれている
このように、照明によってオフィスの雰囲気が大きく変わります。
業務を行う作業スペースには集中しやすく爽やかな「昼光色」、エントランスや会議室には活気があって明るい「昼白色」、休憩室や食堂はリラックスできるように「電球色」というように、その場の目的に合った雰囲気づくりを意識することで、従業員のモチベーションにも良い影響を与える効果が期待されます。
休憩室は従業員の満足度を高める
従業員にとって、業務で疲労した体や脳を休息するための休憩室があるのが理想とされています。
従業員がリフレッシュ、リラックスできる休憩室を設けることで、以下のようなメリットが生まれます。
・疲労をリフレッシュできることで、業務効率が改善できる
・業務の垣根を超えたコミュニケーションが活発になる
・従業員思いの設備を導入することで、従業員の満足度アップにつながる
・従業員満足度の高い企業としてのブランディングにつながる
実際に、カフェスペースや仮眠ができる休息ルームを設けている企業も増えてきているように、従業員の希望を休憩室に反映させることもオフィス改善のひとつの方法です。
オフィス環境改善のポイント
働きやすい職場環境を作るためには、まずは目に見えるオフィス環境を見直すことが効果的だとわかりました。
しかし、従業員のことを考えていない対策は、かえって従業員にストレスを与えてしまい、業務に支障が出てしまうかもしれません。
従業員の満足度を高めながら、会社の生産性向上やブランディングにつなげるためには、企業が「従業員に少しでもいい環境を提供したい」という目的を明確にすることが重要ではないでしょうか。
経営者だけではなく、従業員の声も参考にする
一日のうちの大半を過ごす場所だからこそ、オフィスに一番身近に関わる従業員の声を参考にすれば、改善策は見出せないのではないでしょうか。
経営者が良かれと思って導入したオフィス家具でも、従業員にとっては満足度が低く効果が薄い場合もあるため、どのような点の改善が必要なのか、従業員が実際に感じていることをヒアリングすることが大切です。
はじめは、業務に直結するようなアイディアではなく、「コーヒーメーカーが欲しい」「植物を増やしたい」「仮眠できるスペースが欲しい」といった要望に終始するかもしれません。それでも、従業員の小さな声にも耳を傾けてみてください。そうすることで、従業員の仕事に対するモチベーションが高まり、業務効率の向上にもつながるのではないでしょうか。
レイアウトは従業員目線で決める
業務を行う作業スペースのレイアウトは、従業員の意見を反映させることが業務効率向上の近道といえます。
どのようなデスク配置だと業務に集中しやすいか、チームでの連携が取りやすいかなど、職種や業務内容に合わせて決めましょう。
どのようなレイアウトにするか判断できない場合は、実際に従業員にアンケートに答えてもらうのもひとつの案です。
業務の効率化にも大きく関わる要素ですので、社内全体で話合って決めることでより良いオフィスになるでしょう。
他社のオフィス見学に参加するという手もある
オフィス環境の改善に目を向けていても、実際に何をどう変えたらよいのか頭を悩ませる担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
オフィス環境の改善が成功だと評価するのは、オフィスで働く従業員です。そのため、経営者はどのポイントを優先して改善するべきか悩むのも当然かもしれません。
そのような場合には、他社のオフィス見学に参加してみるのはいかがでしょうか。
最近では、オフィス環境が注目されるようになったこともあり、社内を見学できる企業もあるようです。自社と同じような業種、職種の企業のオフィスを見ることで、新たな気付きがあるかもしれません。
クリエイティブオフィスへの取り組み
オフィス環境の見直しとして、快適性や機能性などが重要視されることは間違いないでしょう。
しかし最近では、これまでのオフィス環境に加えて、組織全体の知識創造を生み出し、個人のクリエイティブな創造力を高めるためのオフィス作りが注目されています。
「クリエイティブオフィス」は、オフィス作りの新しい考え方として生まれました。
働き方改革に目を向ける上で、このクリエイティブオフィスの重要性は高まってきています。
クリエイティブオフィスとは
クリエイティブオフィスとは、組織や従業員個人の創造性を発揮して、企業の成長や発展につながる働き方に適した環境(オフィス)のことを指します。
ひとつの考えに縛られることなく、自由な発想で従業員に適した環境を提供することで、知識創造を生み出しやすくし、企業の発展を促すことが目的とされています。
現在日本では、政府が主導して「働き方改革」に熱心に取り組みはじめています。
働き方改革は、働きやすい職場づくりによって生み出される「従業員一人ひとりの生産性の向上」が目的といえます。こういった本質的な問題に目を向けるためにの施策として、クリエイティブオフィスを意識した「オフィス戦略」の活用が挙げられます。
クリエイティブオフィスを意識したオフィス環境に変えることで、従業員のモチベーションアップ、企業のイノベーション創出など、組織の可能性を最大限に引き出すことにつながると考えられています。
このようなクリエイティブオフィスを意識したオフィス戦略に力を入れることも、企業が働き方改革を推進するためのひとつの方法です。
クリエイティブオフィスがもたらす効果
クリエイティブオフィスを実現することで、企業が以下のように成長していくと考えられています。
・従業員のモチベーションアップ
・オフィス内のコミュニケーションの活性化
・優良企業としてのブランド力を向上させ、企業の競争力の強化
・組織の潜在的な力を引き出し、進化、成長につながる
・ひとつの目標に向けたプロジェクト推進力を高める
・組織と個々の創造性を高める
・オフィス内の業務効率の向上
既存の形にとらわれない自由なオフィスを作ることで、企業の発展につながる新たなアイディアが生まれやすく、働きやすさや業務効率の向上にもつながるのではないでしょうか。
具体的な例としては、色やデザイン、照明などにこだわったオフィス空間や、個性的で斬新なコミュニケーションスペースの導入などがあります。与える環境次第で従業員のパフォーマンス力が変わるというのが、オフィス戦略の重要性と言えるでしょう。
オフィスに設けるスペースの例
① 執務スペース
従業員が一日のうち一番長く滞在するメインスペースであるため、職種や業務に合った適切なデスク配置が推奨されています。
さらには、使用するデスクや椅子、照明にも気を配り、集中力を高めることができる空間作りを意識すると良いでしょう。
チームでの連携が重要視される職種については、コミュニケーションの導線が確保できているかも重要なポイントといえます。
② 個人作業集中スペース
基本の執務スペースとは別に、オフィス内に個人作業用のスペースを導入している企業もあるようです。執務スペースとは離れた場所に配置することで、話し声や視線を遮ることができるため、集中して業務を行いたいときに便利でしょう。
③ ワークショップスペース
ミーティングで生まれたアイディアを元に物づくりを行うためには、ワークショップスペースがあれば便利ではないでしょうか。
ワークショップスペースは、従業員が考えたアイディアを具現化できる場所でもあるため、型にはまらない個性的な雰囲気のデザインを取り入れ、商材に合った空間を再現することで、よりクリエイティブな発想が生まれやすくなる効果が期待されます。
④ブレストスペース
ブレインストーミングと呼ばれる「アイディア創出のための会議」では、会議に参加する従業員がそれぞれ自由な発想と意見を出し合えることが大切です。
そのためには、広く形式的な会議室の雰囲気よりかは、比較的小さな部屋で、アットホームな雰囲気づくりが向いていると言われています。
(出典:経済産業省「感性が育ち、創造が始まるクリエイティブオフィス」)
まとめ
オフィス環境の改善は、働き方改革の本質に関わる重要な施策です。
働きやすいオフィス環境を整えることは、従業員のモチベーション向上や、企業の生産性を高める効果にも期待されます。
そのためには、オフィスを単に働く場所として提供するのではなく、企業を発展させる戦略のひとつとして捉え、クリエイティブオフィスという新しいオフィスの在り方を視野に入れることも、従業員満足度の向上と業務効率化に必要ではないでしょうか。