働き方改革のポイントは「健康経営」なぜ今注目されているの?

近年、「健康経営」の重要性が高まってきていることをご存じでしょうか。

長時間労働や時間外労働が社会問題とされていますが、一方で生産性の低下を指摘する声もあり、時短を目的とした残業廃止といった施策は、本質的な労働環境の改善とは言い切れなくなってきました。

そこで求められているのは、従業員一人ひとりの「生産性の向上」です。生産性を向上するためには業務の効率化が欠かせませんが、そこには従業員個人の能力も必要です。

健康経営は、企業が従業員の健康に配慮することで、従業員の能力を高め、生産性の向上や職場環境の改善に繋がる経営戦略の一環と考えられています。

本記事では、働き方改革の大きなテーマである「健康経営」の重要性について考えていきます。


目次[非表示]

  1. 1.健康経営が注目されている3つの理由
    1. 1.1.①働きやすい労働環境向上
    2. 1.2.②ブランドイメージの向上
    3. 1.3.③労働生産性の向上
  2. 2.健康経営を行うことのメリット
    1. 2.1.健康経営優良法人認定制度(METI/経済産業省)に認定される
    2. 2.2.持続可能な企業体質ができる
  3. 3.時代に合った労働環境にするためにも健康経営は有効
    1. 3.1.ワークライフバランスを重要視する時代に
    2. 3.2.仕事に「やりがい」「人間関係」を求めている人が増えている
  4. 4.今後の健康経営はどうなるのか
    1. 4.1.少子高齢化社会では多様な人材を活かす必要がある
    2. 4.2.健康経営に積極的でない企業は採用活動が困難になることも
  5. 5.早くから健康経営に取り組むことが企業競争の決め手となる
  6. 6.まとめ


健康経営が注目されている3つの理由

従業員の健康管理に取り組むことで、企業の成長や生産性の向上につながるとされている「健康経営」。

健康経営の目的は、従業員の健康づくりによって企業の業績や企業価値を高めることです。
従業員の健康維持がゴールではなく、人手不足による機会損失を防ぐために、企業が「投資」として捉え取り組むべき経営戦略のことを指します。
そして、多くの企業が健康経営への取り組みを進めています。

健康経営が推奨される理由には、以下の社会的背景や長期的なメリットがあるためだといえます。


①働きやすい労働環境向上

少子高齢化が進行している日本では、働き手となる労働力不足の問題に多くの企業が直面するといわれています。
そこで求められるのは、従業員一人当たりの生産性を高めることと、介護や子育てといった、プライベートと両立できる働きやすい労働環境づくりです。

労働人口が減少するなか、従業員の生産性を高めて働きやすい職場づくりするためには、就業時間の見直しと共に、従業員の健康を改善または維持することが重要な課題です。

従業員の健康状態が悪ければ、欠勤や休職などによって希少な労働力が失われるだけでなく、従業員に対する医療費負担額が増え、企業にとって大きな損失となります。

従業員に健康を維持して働いてもらうことは、休職や離職を防ぐことができ、労働生産性の向上や医療費負担の削減にもつながるでしょう。


②ブランドイメージの向上

従業員の健康に問題があった場合は、企業側がリスクを背負わなければならないケースもあり、ときには企業イメージが損なわれる原因にもなります。

企業のブランドイメージ低下は、株価や業績にも影響するため、従業員の健康に配慮した経営を行うことは、ブランドの価値を維持するためにも必要な施策のひとつです。

また、株価や業績などの直接的な影響だけでなく、間接的な影響もあります。

たとえば、就職活動や転職活動をする人にとって、企業がどのような労働環境の改善や従業員の健康対策に取り組んでいるかという点は、企業の良し悪しを判断する要素のひとつです。

事実、経済産業省の発表では、健康経営を積極的に取り組む企業は株価が上がりやすく、会社のイメージアップや採用が有利になるということも示されています。

(出典:経済産業省「企業による「健康投資」に関する情報開示について」)


健康経営を組織戦略として取り組むと、経営的視点だけでなく人材確保の面からもメリットが大きいことがわかります。


③労働生産性の向上

健康経営が注目される理由として「労働生産性の向上」も注目されています。

長時間労働が続くと、慢性的に疲れている状態になり、その結果心身ともに健康不良を引き起こし、欠勤や休業が増え、生産性の低下につながります。
出勤している場合でも、健康状態が悪く通常のパフォーマンスが発揮できない場合は、どうしても生産性が下がってしまいます。

一方、従業員がいきいきと健康で働けるような環境であれば、仕事に対するモチベーションや集中力が高まり、生産性が自然と高まるでしょう。
従業員の健康管理に目を向けた施策は、企業にとっても従業員にとってもプラスの効果があるといえます。


健康経営を行うことのメリット

健康経営は、働き方改革の本質的な課題である「生産性の向上」につながる重要な経営戦略です。また、生産性の向上だけでなくさまざまな効果を得ることができます。


健康経営優良法人認定制度(METI/経済産業省)に認定される

多くの企業が健康経営を意識している目的として、政府が推奨している「健康経営優良法人認定制度」の認定が挙げられます。

健康経営優良法人認定制度とは、日本健康会議が「特に優良な健康経営を実践している法人」を認定する制度のことで、2017年度から始まり2019年度で三度目です。

この制度に認定されると、社会的な評価を得られ、自社のブランディングにもつながるため、企業価値を高めるひとつの指標とされています。

また、認定企業は健康経営優良法人であるロゴマークを名刺や看板に表示する権利があるため、自社のPRにも効果が期待できるでしょう。

初回に開かれた「健康経営優良法人2017」では、大規模法人部門が235法人、中小規模法人部門では318法人だったのに対し、「健康経営優良法人2019」では大規模法人部門が820法人、中小規模法人部門が2503法人と、2017年度と比較して数倍以上の法人が日本健康会議より認定されていることからも、企業の健康経営に対する関心の高さがわかります。

認定基準や認定までの審査方法は大規模部門と中小規模部門で異なるため、申請方法やスケジュールについては事前に調べることをおすすめします。

(出典:経済産業省 「健康経営優良法人認定制度」)


持続可能な企業体質ができる

従業員の健康に投資することは、人材戦略においてもメリットが大きいといわれています。
人材不足が深刻化している以上、離職率の低下を防ぎ、採用活動を活発に行うといった人材戦略は欠かせません。

従業員一人ひとりの健康に配慮した取り組みを行うことは、従業員の健康状態を向上させるだけでなく、「職場環境の改善」「働きやすさ」にもつながるといえます。

働きやすい職場づくりができれば、離職が減るだけでなく「この会社で働きたい」という求職者が増え、人材確保にも効果を発揮するでしょう。

労働力の確保が難しいとされている今、自社の魅力を強化することにもつながる健康経営に取り組むことは、将来に向けた経営投資のひとつです。


時代に合った労働環境にするためにも健康経営は有効

大手運送会社が送料の値上げや配送時間を短縮したように、サービスや給料よりも労働環境を意識した取り組みが多くの企業で実施されています。

健康経営が重要視される背景には、そういった労働環境に対する従業員の意識や価値観が時代と共に変わってきているからではないでしょうか。
昔と比べて人々の働き方やライフスタイルが変わってきています。そして、それらの変化に対応するためにも、企業側は従業員の満足度を高め、働きやすい環境へと改善する姿勢が求められています。


ワークライフバランスを重要視する時代に

ワークライフバランスとは、仕事とプライベートを分けて考えることではなく、「生活が充実することで仕事へのモチベーションが上がる」「仕事をすることでプライベートも楽しくなる」といったように、仕事とプライベート相互に良い影響を与えられる働き方のことを指します。

ワークライフバランスは、年齢やライフステージ、プライベートに求めることによって変わってきます。
そのため、従業員それぞれが理想とする仕事とプライベートのバランスを柔軟に選択できるかどうかが重要です。

高齢者や女性、障がい者などすべての人が自分に合った働き方を選べるように、企業がワークライフバランスへの意識を高めることが求められています。


仕事に「やりがい」「人間関係」を求めている人が増えている

ワークライフバランスの必要性に加えて、仕事に対する考え方にも変化が起こりつつあります。

エン・ジャパンが運営する「エン転職」による調査では、登録者の96%が仕事へのやりがいが必要だと回答しており、その理由には「仕事が充実するから」「自信が成長できるから」「自分の存在価値を感じるから」という意見が上位を占めていることが分かっています。

(出典:エン・ジャパン株式会社「アンケート集計結果発表」)

給料の高さよりも、やりがいやスキルアップにつながる仕事を選びたいという意識が高まってきていることからも、健康経営によって生き生きとした働き方をサポートすることは企業の大きな魅力になるでしょう。


今後の健康経営はどうなるのか

健康経営は、今後ますます重要性が高くなることが予想されています。
その理由として、働き方の多様化や仕事、生活に対する考え方が変わってきているということが挙げられるでしょう。


少子高齢化社会では多様な人材を活かす必要がある

少子高齢化が進む今、社会全体として高齢者や女性の労働参加が求められています。
しかし、現状では子育て世代や高齢者の働き方が限られているため、希少な労働力を活かすことができないという企業も多いのではないでしょうか。

人材確保に対して企業ができる対策として、幅広い人材が仕事に就ける多様な働き方を提案し、従業員へ健康投資を行うことが挙げられます。
一人でも多くの人に「この会社で働きたい」と思ってもらうことで、人材確保や離職を防ぐ効果が期待できます。


健康経営に積極的でない企業は採用活動が困難になることも

就職活動や転職活動をしている人にとって、働きやすさや労働環境を重要視するほか、その企業が優良な組織であることは重要な判断基準となります。

経済産業省の発表では、健康投資を行っている企業はリクルート効果が高く、投資に対するリターンが大きいと示されています。

企業の業績や生産性向上だけでなく、ブランド価値や採用活動にも有利となる健康経営は、安定した経営をしていくうえで欠かせない戦略といえるでしょう。

(出典:経済産業省「企業による「健康投資」に関する情報開示について」)


早くから健康経営に取り組むことが企業競争の決め手となる


前述のように、従業員の健康を維持することは企業全体の生産性を高め、企業のイメージアップにもつながる有効な投資です。

また、従業員の離職を防ぎ定着率の向上を目指すことは、企業競争で生き残るためにも必要な手段のひとつといえます。

まだすべての企業に浸透しているとはいえない健康経営ですが、いち早く目を向けることで先行者利益を得やすくなるというメリットもあるでしょう。


まとめ


健康経営は、人手不足や働き方の多様化が進むうえで考えなければならない施策といわれています。
従業員の健康に配慮することは、働き方改革のテーマでもある「生産性向上」にもつながり、企業のイメージ向上や人員確保にも大きなメリットがあることがわかりました。
まずは、自社の従業員がどのような問題を抱えているのか、健康課題を把握することから始めてみるのも健康経営への第一歩ではないでしょうか。