時短だけではない!働き方改革成功のアイデア10選
社会全体で働き方改革の実現に向けた動きが強まってきています。
長時間労働や残業といった労働環境の改善や、働き方に対するニーズに対応できる施策を打ち出すことは、少子高齢化問題を抱える現代において重要な課題のひとつといえるのではないでしょうか。
2019年4月から2020年4月にかけて順次施行する労働基準法の改正により、就業規則の見直しをはじめ、個々の意思やライフバランスに合わせた働き方を選択できる社会を目指す決定を政府が公表しています。
(参照:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要」)
新たな労働基準法は、企業全体に労働環境の改善を求めています。
働き方改革の目的や方針を正しく理解することで、労働環境の改善や業務効率化に役立てられるでしょう。
本記事では、働き方改革の重要性や施策例について紹介します。
目次[非表示]
- 1.働き方改革とは
- 1.1.働き方改革が始まった背景
- 1.2.働き方改革が目指すもの
- 2.2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行
- 2.1.企業が対応するべきポイント
- 2.1.1.残業時間の上限規制
- 2.1.2.年5日の年次有給休暇を義務化
- 2.1.3.「勤務間インターバル」制度の導入を促進
- 2.1.4.「高度プロフェッショナル制度」を新設
- 2.1.5.「産業医・産業保健機能」の強化
- 2.1.6.雇用形態に関わらない、公正な待遇の確保
- 3.働き方改革成功のために、まずは社内の問題を解決しよう
- 4.働き方改革成功のためのアイデア
- 4.1.①研修制度の充実
- 4.2.②会議の削減
- 4.3.③給与規定の見直し
- 4.4.④人事評価制度の導入
- 4.5.⑤リモートワーク(テレワーク)
- 4.6.⑥フレックスタイム制度
- 4.7.⑦有給休暇の取得
- 4.8.⑧休暇制度の充実
- 4.9.⑨CWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)を任命
- 4.10.⑩健康経営の導入
- 5.まとめ
働き方改革とは
そもそも働き方改革とは、どういった取り組みなのでしょうか。
現在の日本では、少子高齢化による企業の人手不足問題や、共働き世帯の増加による、多様な働き方へのニーズが強まっています。
働き方改革は、人手不足によって起こる労働時間の問題を改善するとともに、育児や介護を仕事と両立できるように、個人の意思や事情に合わせた多様な働き方が選択できる社会を目指すことを目的としています。
それぞれが職場で無理なく働けるようになることは、離職率の低下、生産性の向上など、社会全体にとって良いサイクルが生まれると考えられています。
働き方改革が始まった背景
働き方改革が必要とされる背景には、主に二つの理由が考えられます。
一つ目は、少子高齢化による生産年齢人口の減少です。
総務省が行った国税調査によると、少子高齢化の深刻化に伴い生産性人口(15歳~64歳)は、2008年をピークに減少が続いています。さらに、14歳以下の総計人口は1982年から減少が続いており、今後も少子化が進んでいくと予測されています。
また、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2060年の総人口は2010年の人口に比べて32.3%まで減少し、生産年齢人口についても2060年には同年の45.9%まで減少すると推計されています。
(出典:総務省「第1部 特集 データ主導経済と社会変革」)
少子高齢化による労働者人口の減少は、労働力不足へとつながり、日本経済への影響も予想できます。労働力を確保し、経済を支えていくためには、「業務効率化」「高齢者や女性の雇用拡大」といった生産性向上に向けた施策の検討が必要といえるでしょう。
二つ目に挙げられるのは、「ワークライフバランス」という考え方の拡大です。
ワークライフバランスとは、仕事とプライベートをバランス良く調和した働き方、生き方のことを意味します。職務を果たす一方で、家事や育児、趣味などのプライベートな時間を持つことは、充実した暮らしには欠かせません。
「仕事に追われていてプライベートの時間が持てない」「育児や介護と仕事を両立するのが難しい」など、仕事と生活のバランスが上手く取れない人のために、ワークライフバランスを改善し、働きやすい社会へ変えていこうとする考えが活発になっています。
過重労働による従業員への健康被害や、保育士の不足による待機児童、介護施設の不足などが問題視されている今、従業員が健康かつ仕事とプライベートを両立できる労働環境づくりは、従業員の労働意欲向上や人材確保にもつながるため、企業の発展に向けた重要な取り組みのひとつといえるでしょう。
働き方改革が目指すもの
政府は、労働人口の減少に対応するために、個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会を目指しており、「働く人物一人ひとりが、より良い将来の展望をもてるようにすること」を実現する働き方改革を推進しています。
働き方改革は、企業の経営に関わるだけでなく、従業員の「暮らし」や「生き方」にもつながります。共働き世帯の増加や少子高齢化の進行を考えると、従業員の家事や育児、介護などの時間を大事にしながらも、労働者として仕事を果たせる環境づくりが求められるでしょう。
企業が生産性向上により成果を上げるためには、長時間労働といった労働環境問題を解消するだけでなく、パートタイマーや時短勤務など幅広い雇用形態を導入し、ワークライフバランス向上へのフォローが大切だといえます。
企業の発展のみに重点を置くのではなく、従業員と企業、双方のメリットを追求して、企業の経済面から従業員の精神面まで広く目を向けることが大切です。
2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行
政府は、働き方改革実現に向けた法律を2019年4月から順次施行し始めました。時間外労働の上限規制や年次有給休暇制度、従業員の健康維持、ワークライフバランスの実現を目指した制度が新たに発表され、企業は従業員に対して適切な対応が求められます。
(出典:厚生労働省「働き方改革 ~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」)
企業が対応するべきポイント
残業時間の上限規制
これまでの労働基準法においては、行政の指導のみで、残業時間の上限はありませんでしたが、長時間労働による健康被害を防止するために、残業時間の規制が設けられました。
今回の改正において、以下のように残業時間の上限が定められています。この上限を超過する残業は、法によって禁止されます。
・残業時間は原則45時間、年360時間を上限とする
・臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも「年720時間以内」「複数月平均80時間以内」「月100時間未満」は超えられない
※この上限規制には適用を猶予、除外する事業や業務があります
※大企業の適用は2019年4月1日だが、中小企業の適用は2020年4月1日
企業はこの法律に則り、業務内容や取引環境、人員配置などを再度検討することが重要となります。
年5日の年次有給休暇を義務化
改正前の有給休暇制度では、休暇を取得するために労働者が自ら申し出る必要がありました。法改正後は、使用者が従業員に希望を聴取しその希望を踏まえたうえで、年に5日の有給休暇を与えるよう義務付けられています。
「勤務間インターバル」制度の導入を促進
勤務間インターバル制度とは、労働者の就業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間の休息(インターバル)を設定する制度のことで、政府が企業の努力義務として推奨しています。
休息時間の少ない長時間労働は、従業員の体調不良やメンタルヘルスなどの問題を引き起こすリスクがあります。また、睡眠不足になると、業務効率の低下を招きかねません。
終業後に一定の勤務間インターバルを設けることで、充分な休息や睡眠時間を確保できるようになります。しっかりと休息時間を与え、従業員の健康維持や良質な睡眠をサポートし、業務効率向上にもつなげていきます。
「高度プロフェッショナル制度」を新設
高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識を持ち、一定の年収要件を満たす労働者に対して、労働基準法に規定されている労働時間や休日、割増賃金を適用しない制度です。成果型の労働制度と言い換えられます。
対象の労働者には研究開発やコンサルタント業務などに携わる人が挙げられており、施行段階では年収1,075万円以上の人が対象となっています。
メリットとしては、労働時間が賃金に反映されないため、短時間で成果をあげようというモチベーションの向上や、プライベートな時間が確保できる点が挙げられます。
「産業医・産業保健機能」の強化
労働安全衛生法では、労働者50人以上の事業場において、従業員の健康管理などを専門に指導する産業医を在籍させなければなりません(50人未満の事業場については、産業医の設置義務はありませんが、従業員の健康管理を医師等に行わせる努力義務があります)。
法改正後、事業者は従業員の就業状況などを産業医へ情報提供する義務があり、産業医から勧告を受けた場合は事業場の労使や衛生委員会への報告が必要となりました。
これにより、長時間労働やストレスなどに起因する従業員の健康問題を、適宜改善していき、働きやすい職場環境づくりを行っていきます。
雇用形態に関わらない、公正な待遇の確保
働き方改革で特に注目されている点は、「雇用形態によって不合理な待遇の差を無くす」ことでしょう。
法改正によって、正社員や契約社員、パートタイマーなどの勤務形態において、基本給や賞与、手当などに不合理な差を設けることは禁止されます。企業には、個々の待遇差が適切なものであるか明確に判断し、均等待遇規定を念頭におく必要があります。
仮に、正社員やパートタイマーなど勤務形態が異なる従業員に対して、不合理な賃金差や手当の差などがある場合には、これを解消しなくてはなりません。職務内容(業務内容と責任程度)などによって区別せず、均等な扱いが必須となります。
働き方の多様化が進むなかで、有期雇用やパートタイマーの従業員が働きやすい職場環境の整備は、定着率や従業員の満足度を高めることにつながります。
働き方改革成功のために、まずは社内の問題を解決しよう
働き方改革を実現させるためには、まず企業の内部に目を向け、問題があれば解決することが重要となります。
労働力人口が減少するなかで、慢性的な人手不足問題に頭を悩ませている方も多いでしょう。人手不足に対応するためは、従業員一人ひとりのモチベーションや生産性、さらに企業全体の業務効率と生産性を向上させていく必要があります。
働き方改革に向けて企業は次の三つの点が重要となります。
・業務を見える化する
・属人化をなくす
・採用のミスマッチを防ぐ
まず、業務の「見える化」によって、業務の手順や体系を統一し、業務効率化を図ります。非生産的な業務がないか、業務の偏りはないか、人員配置や連携業務に問題がないかなど、それぞれの業務を可視化し、改善点を把握します。
そして、仕事の属人化を解消することも重要です。
属人化を解消して業務を社内に共有し、フローを明確にすることで、従業員一人あたりの負担が軽減でき、短時間での業務遂行が可能となります。
さらに、人手不足解消のためには人材確保が欠かせません。離職防止や定着率アップを目指すには、「採用のミスマッチを防ぐ」ことが重要となります。
従業員の入社前と入社後のギャップを払拭し、企業と従業員との双方の意向を合わせることで、早期離職の防止や、その後活躍が期待できます。
採用後の仕事内容や職場環境について定期的にフォローすることで大きな効果が見込めるでしょう。
働き方改革成功のためのアイデア
働き方改革の成功を目指して、自社に必要な施策を検討してみてはいかがでしょうか。計10点のアイデアについて順に説明します。
①研修制度の充実
新卒採用はもちろん、中途採用が多い職場であっても、詳しい業務方法の研修を実施することで、業務の属人化防止や業務の組み立て方を統一できるため、チームでの業務連携がスムーズになるといった効果が期待できます。
②会議の削減
業務効率化を図る方法として、会議の回数や時間の削減が挙げられます。特に、有意義とは言い難い、業務時間を圧迫する原因となる会議においては、取捨選択が大切になるでしょう。
業務時間を有効に使うためにも、会議時間の上限を決めたり、参加者の精査をしたりするなど、固定化している会議をあらためて見直すのも有効な手段かもしれません。
③給与規定の見直し
働き方改革の重要な課題のひとつが、正規社員と非正規社員の不合理な待遇差を無くすことです。企業には、従業員の給与規定が公正かつ適正であることが求められます。
たとえば、同じ業務に従事する従業員がいたとして、雇用形態の違いによって不合理な賃金差や、福利厚生が受けられないなどの差があった場合、それは適正な対応とは言えません。
業務や能力に合わせ、正当な給与規定へ見直すことで、従業員満足度の向上につながるでしょう。
④人事評価制度の導入
人事評価制度は、企業が定めた基準をもとに従業員を公平に評価し、適切な人材配置を目的に行います。従業員にとっても、企業の経営理念を理解できるようになるほか、自身で目標を立てやすくなり、仕事のモチベーション向上につながります。
また、仕事に対して公平に評価される制度があることは、企業への信頼性を高めるだけでなく、優秀な人材育成にも効果的といえます。
⑤リモートワーク(テレワーク)
柔軟な働き方に対応するため、出社不要なリモートワークを導入する企業も増えています。自宅や外出先での業務を可能にすることで、通勤時間を有効活用でき、仕事との両立が難しかった育児や介護に関わる従業員が、離職せず仕事を続けられるというメリットがあります。
⑥フレックスタイム制度
フレックスタイム制とは、従業員が始業と終業時刻、あるいは勤務時間を自分で決定できる変形時間労働制のひとつです。一定期間の総労働時間と、必ず出社しなければならないコアタイムをそれぞれ定めることで、それ以外の時間帯は自由に出社、退社ができるという制度になります。
役所に立ち寄ってから出社したい、子どもの帰宅に合わせて早めに退社したいなど、ワークライフバランスを重視できるため、従業員のモチベーション向上が期待できます。
⑦有給休暇の取得
働き方改革法案により、有給休暇取得に関する労働基準法が改正され、1年間に最低でも5日の有給休暇を従業員に与えることが義務付けられました。
休暇が取りづらい職場における、有給休暇取得率を向上させることができると考えられます。従業員への有給休暇希望日の聴取を積極的に行うことで、従業員満足度を高められ、健康管理も効果的に行うことが可能となるでしょう。
⑧休暇制度の充実
法律で定められている産休や育休といった休暇制度のほか、育児や介護に関わる従業員に対して、参観日休暇や介護休暇などを付与する企業が増えてきています。
育児や介護など、従業員のライフステージによって働き方のニーズは変わっていきます。独自の福利厚生として多様な休暇制度を設けることは、長く働きやすい魅力的な職場づくりにつながるといえます。
充実した福利厚生は、他社との差別化やブランドイメージの向上にも期待できるため、採用活動においても大きなメリットになるかもしれません。
⑨CWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)を任命
働き方改革を実現させるために、企業の新たな役職として「CWO」を設定する企業が増えてきています。
CWOとは、働き方改革を経営戦略としてだけでなく、従業員の「働きやすさ」につながる改革だという視点を持ち、企業の業績と従業員のパフォーマンスの二点の向上を図る役職を指します。
CWOを任命して働き方改革をプロジェクト化することで、実感度の高い企業改善を実現できると期待されています。
⑩健康経営の導入
長時間労働によるメンタルヘルス不調など、健康被害が社会問題になっていることにより、健康経営を目指す企業が増加しています。残業規制といった就業規則の見直しのほか、従業員の健康維持、増進を支える福利厚生の充実は、企業の経営面にも効果が期待できます。
従業員の健康を維持することにより、労働力の損失を防止でき、生産性や定着率の向上へとつながります。働き方改革を進めるうえで、健康経営は企業にとって投資のひとつともいえます。健康診断やストレスチェックをはじめ、食事改善、ジム制度など、従業員のニーズに合わせた各種サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
働き方改革の目的は、多種多様な働き方を選択できる社会を実現することです。
そのためにはまず、社内の課題を解決し、従業員が働きやすい環境づくりが必要になるでしょう。
本記事でご紹介したアイデアを、社内の働き方改革に活かしていただけると幸いです。