福利厚生はアウトソーシングが可能!企業・従業員にとってのメリットとは?
働き方改革では、従業員が働きやすい職場環境づくりを推進しています。
労働環境の本質的な改善には、残業や有給休暇の規定といった就業規則の見直しとともに、ワークライフバランスを意識した福利厚生の充実がポイントといえるでしょう。
最近では、法定福利厚生のほか、独自のユニークな法定外福利厚生を導入し始めている企業も珍しくなく、ブランディングや採用活動の面でも効果を発揮しています。
しかし、福利厚生は業種や従業員の年齢、性別によってそれぞれニーズが異なるため、柔軟性が高く、なおかつ実効性のある制度を選ぶ必要があります。
企業担当者の方のなかには、どのような福利厚生を導入すれば良いのか、頭を悩ませている方もいるでしょう。
本記事では、今注目されている福利厚生を紹介するとともに、福利厚生のアウトソーシングについて解説します。
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充実した福利厚生が求められている
福利厚生には社会保険や、子ども・子育て拠出金といった法律で義務付けられている「法定福利厚生」のほかに、法律での定めがない「法定外福利厚生」があります。
法定外福利厚生は、企業が任意で設けることのできる制度です。企業は経営方針や従業員のニーズによって、福利厚生の内容を充実させることができます。
現在、多くの企業で人手不足が深刻な問題となっているなかで、充実した福利厚生の導入・整備は、人手不足解消の一翼を担うでしょう。
内閣府が調査した「人手不足感の高まり」についての発表で、現在の日本経済において、大手企業、中小企業ともに労働供給が追い付いていない事実が明らかになりました。さらに、大企業では正社員よりもパートタイム労働者の不足感が、中小企業ではパートタイム労働者よりも正社員の人手不足感が強くなっていることも判明しています。
(参考:内閣府 「人手不足感の高まりについて 」)
また、中途採用で人材を確保できない企業は半数を超えている現状です。
人手不足が企業にもたらす影響は大きく、はやめの対策が必要といえます。
求職者は福利厚生の充実を重要視する
人手不足に対応するために、採用活動を熱心に行っている企業も多いのではないでしょうか。
売り手市場である現在、求職者はどのような基準で企業を選択しているのでしょうか。
経済産業省は、2017年に就活生を対象に「将来どのような企業に就職したいか」というアンケートを実施しました。最も多い割合を占めたのは、「福利厚生が充実している(44.2パーセント)」、次いで「従業員の健康や働き方に配慮している(43.8パーセント)」となっています。
一方、給料水準の高さや安定した企業業績を重視する学生は全体の20パーセント台と、比較的低い割合の傾向にありました。
(出典:経済産業省「健康経営の推進について」)
この結果を踏まえても、福利厚生への取り組みは、採用活動に大きな効果をもたらすといえるでしょう。
充実した福利厚生は従業員のモチベーション向上につながる
従業員のモチベーションを向上させる施策は、定着率向上や安定した採用活動を図るためにも必要不可欠です。従業員のモチベーション向上は、生産性の向上にもつながります。
厚生労働省職業安定局は、中小企業における雇用管理制度等の実施状況と「働きやすさ」「働きがい」との関係などを探るため、中小企業の人事担当者や従業員に対するアンケート調査を2014年に行いました。
そのなかで、保養施設やフィットネスクラブの利用補助制度、余暇活動の支援制度など、健康づくりのための支援制度を導入している企業は、導入していない企業に比べて「働きやすい」と回答した人の割合が15パーセント以上高いという結果が出ています。
さらに、働きやすさや働きがいを感じている従業員は、そうでない従業員と比べて、仕事に対する意欲が高い傾向にあることも分かっています。
(出典:厚生労働省職業安定局「働きやすい・働きがいのある 職場づくりに関する調査 報告書」)
仕事を通じて自己成長を促進させ、プライベートの充実を図る施策の導入は、企業の信頼性や従業員のモチベーションを向上させる効果が期待できます。
また、企業の人材確保や離職防止にも効果を発揮するでしょう。
多様な従業員ニーズにこたえる方法とは
これまでの福利厚生といえば、慶弔見舞給付や住宅補助などが大半を占めていました。
しかし近年では、従業員の健康維持やライフサポートを目的とした福利厚生がトレンドとなっており、注目を集めています。
ニーズが高いのはライフサポートと医療・健康
労働政策研究・研修機構(JILPT)は2018年、企業に対して福利厚生施策についての調査を行いました。その結果、企業による「今後充実させたい施策」の項目では、メンタルヘルスの相談や仕事と治療の両立支援、自己啓発サービスの経済補助などへの関心が高い結果となっています。
また、従業員に対して「必要性が高い施策」について尋ねたところ、人間ドッグやリフレッシュ休暇など、健康管理に関する施策が多い傾向でした。
(出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)ビジネス・レーバー・トレンド2018年8・9月号「福利厚生のトレンド」)
この調査結果から、これまでの慶弔見舞給付や住宅補助に関する施策よりも、従業員の仕事やプライベートに直結する福利厚生がトレンドとなっていることがうかがえます。特に、健康管理や休暇関連へのニーズが高くなっており、こうしたニーズに応える福利厚生の充実は従業員満足度向上につながると考えられます。
カフェテリアプランの導入
従業員が福利厚生を自由に選択できる「カフェテリアプラン」を導入する企業も増えてきています。
カフェテリアプランとは、一定額の補助金(ポイント)を付与し、利用したいメニューを所定期間内に消化させる「選択型福利厚生」制度です。従業員にとって自分の望む福利厚生サービスを中心に利用できるため、満足度向上が期待できます。また、選択させたいサービスを中心にメニューを作成することで、一定の誘導効果が発揮できるでしょう。
しかし、カフェテリアプランを自社で運用する際には懸念材料がいくつかあります。たとえば、付与ポイントを管理精算する業務に加え、Web利用の対応に向けたシステム化など、業務負荷やコストが割高に見られる点です。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、カフェテリアプランの導入にあたり企業が課題としているのは「現行の福利厚生施策が少ない(24.3パーセント)」が最も多く、次いで「運用が面倒になり、コストがかかる(16.2パーセント)」「運用のノウハウがない(16.2パーセント)」という結果でした。
(出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)ビジネス・レーバー・トレンド2018年8・9月号「福利厚生のトレンド」)
これらの懸念点を理由に、近年ではアウトソーシングを活用する企業が増えてきています。
アウトソーシングでカフェテリアプランを利用すると、メニュー数が飛躍的に増加するため、利用の選択肢を広げられます。
福利厚生をアウトソーシングする方法
労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施した「アウトソーシング、カフェテリアプランの実施・導入状況」の調査によると、全2,809社のうちアウトソーシングを実施している企業は421社で、全体の15パーセントという結果でした。
そのなかで、従業員1,000人以上の企業規模では実施率が37.5パーセントと、企業規模が大きくなるにつれて導入の割合が高いことが分かりました。
(出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)ビジネス・レーバー・トレンド2018年8・9月号「福利厚生のトレンド」)
ここからは、福利厚生をアウトソーシングする方法について、メリットや課題点をまじえながら、企業と従業員、それぞれの目線で考えていきます。
アウトソーシングするメリット
企業のメリット
福利厚生のコストを適切に管理することは重要な経営戦略のひとつです。
企業が任意で導入できる法定外福利厚生については、従業員の生活に貢献するものであっても、現在ではニーズが減少している場合もあり得るでしょう。ニーズの少ない福利厚生に関しては廃止したり、アウトソーシングを導入したりすることで、コスト削減につながります。
特に大企業では、カフェテリアプランの導入率が高く、多種多様なメニューで個々のニーズに柔軟に対応しやすくなっていますが、アウトソーシングすることで、全国的なエリアでさまざまなサービスやコンテンツとの連携までもが可能となります。そのため、各エリアに従業員が分散している大企業にとって、アウトソーシングは従業員すべてに公平な福利厚生を提供できるという利点を生みます。
また、法定福利厚生においてもメリットがあります。企業は社会保険に関する法令の変更に則って、常に法定福利厚生の内容を最新の状態にする必要があります。なかには専門知識を要する項目もあるでしょう。そのため、自社で人材育成やトレーニングをするより、アウトソーシングによって管理する方が経営を効率化しやすくなるケースもあるといえます。
従業員のメリット
福利厚生は、企業が従業員の仕事や健康、生活などを安定をさせ、サポートするための制度です。福利厚生を見直し、従業員のニーズに応えられる制度を導入することで、モチベーションの向上やキャリアアップ、プライベートの充実など、企業からの多方面へのバックアップが期待できます。
そのほか、福利厚生をアウトソーシングすると、レクリエーション活動の幹事といった、通常の業務外でかかる従業員個人への負担を軽減できます。福利厚生の利用窓口はWeb上にあるため、利用するハードルも低くなるでしょう。従業員へ負担を感じさせずに福利厚生の活用を促進できるため、従業員から喜ばれるシステムといえるのではないでしょうか。
アウトソーシングするデメリット
企業のデメリット
福利厚生の運用にアウトソーシングを利用する際、二つの課題が挙げられます。
まず一つ目は、アウトソーシングで導入された福利厚生メニューが従業員のニーズに沿わないケースがあることです。契約が締結されたものの実際には浸透しないというリスクは、現状のサービス分析や従業員のニーズを事前にリサーチすることで予防できます。コスト削減のためにも、活用頻度状況やニーズの有無の把握が重要となるでしょう。
二つ目は、自社に最適なアウトソーシング業者を選べるかどうかという点です。業者によって契約形態や会員数、導入例などが異なってきます。企業の規模によって、得意とするプランが異なる業者もあります。そのため、自社の規模に合わせた最適なメニューを提供できるアウトソーシング業者の選定がポイントとなるでしょう。
従業員のデメリット
アウトソーシングによってこれまでの福利厚生を見直すことで、利用頻度が少ない福利厚生を廃止したり、新たな福利厚生のメニューの増加で、利用方法を煩雑化させたりするケースがあり得ます。
また、会員サイトの利用方法が不明慮だったり、不明点やトラブルがあったときに問い合わせできる体制が用意されていなかったりすれば、かえって従業員の不満を助長させてしまいかねません。
企業にとっても従業員にとっても、魅力的な福利厚生メニューとサポート体制を提供できるアウトソーシング業者の選定がリスクを回避するための足掛かりとなるでしょう。
最適なメニューとサポート体制で利用頻度の向上につなげていくことが重要です。
今注目されている福利厚生は健康関係
最近では、福利厚生のなかでも、健康に関する制度への関心が高まってきています。
これまで福利厚生といえば、住宅関連や慶弔関連などが一般的でしたが、働き方改革で健康経営が推進されている背景もあり、従業員の健康管理やメンタルヘルス対策を強化する企業が増えてきました。
また、少子高齢化社会や共働き世帯増加の影響により、高齢者や女性の雇用が拡大しています。人材確保や定着率向上のためにも、従業員それぞれのライフステージを考慮した職場づくりが今後ますます必要になってきます。
より独自色のある福利厚生の導入は、ブランディングや採用活動にも有効となるでしょう。
健康経営の導入を政府が推奨
労働環境の見直しや多様な働き方に対応するために、政府によって働き方改革が推進されています。その一環として推奨されているのが「健康経営」です。
健康経営は、従業員の健康維持に積極的に取り組むことで、定着率アップや生産性向上を図る経営手法です。
健康経営の代表的な施策として挙げられるのは、「健康診断」の実施です。
事業者は、労働安全衛生に基づき、従業員に対して健康診断を実施する必要があります。健康診断に加えて、法律による定めはないものの、福利厚生として人間ドッグやメンタルヘルス相談などを提供している企業も増えてきました。
福利厚生は、従業員の仕事へのモチベーションや定着率と密接に関わっています。健康経営の一環として、従業員の健康を考えた福利厚生サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
健康に関する福利厚生のアウトソーシング
福利厚生導入の際にポイントとなるのは、「従業員のニーズに沿っている制度」かつ「利用が見込まれる制度」という点です。
福利厚生の運営には適切な予算案や人員配置が必要となってきます。自社のみでの運営は負担が大きいと悩む企業担当者の方もいらっしゃるでしょう。
そういった課題を総合的にサポートしてくれる方法として、アウトソーシングがあります。自社のニーズや予算、現在の福利厚生とを比較・検討し、最適な福利厚生を考案してくれます。
健康経営向けの福利厚生メニューも多数展開されており、パーソナルジムやメンタルケア対策サービス、食事補助、健康セミナーなど、心身の健康維持を目的とした多種多様なサービスがそろっています。
自社のみでは管理が難しい、最適な福利厚生メニューを導入したいといった場合は、アウトソーシングによって福利厚生の見直しを図ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
すべての従業員が満足する福利厚生制度を設けるのは、容易なことではありません。
年齢や性別、職種を問わず、社内全体に浸透する福利厚生を導入するためには、カフェテリアプランのように、必要なサービスを従業員が自由に選択できる制度を取り入れるのも有効な手段のひとつといえます。
また、健康に関するカウンセリングや食事補助などの福利厚生は、体調不良やメンタルヘルス問題による欠員や離職を防止し、保険料の負担削減につながります。健康管理が行き届いた会社は従業員から信頼を得やすいため、定着率向上や従業員のモチベーション向上、さらに企業イメージの向上も期待できるでしょう。
ワークライフバランスや健康経営の観点からも、充実した福利厚生は従業員だけでなく企業にも大きなリターンを生み出します。社内の労働環境の見直しを検討している方は、まずは福利厚生の改善・充実に目を向けてみてはいかがでしょうか。