健康経営に「食」のサポートは欠かせない!食事の問題点と取り組み例を解説
従業員の健康づくりに目を向けた健康経営。
健康経営に向けた企業の取り組みのひとつとして、“従業員の食事サポート”が挙げられます。
毎日摂る食事は、従業員の健康状態を左右する重要な要素のひとつです。健康経営を推進するにあたり、職場での食生活改善は企業にとって大切な取り組みといえるでしょう。
本記事では、従業員の食生活を管理する重要性や、企業ができる食事サポートの取り組みについて紹介します。
目次[非表示]
- 1.従業員の健康づくりには食事が肝心
- 2.朝食の摂取
- 2.1.朝食を抜く人の割合
- 2.2.朝食を抜くとどのような影響があるか
- 2.3.朝食を摂らない従業員への取り組み
- 3.野菜の摂取量
- 3.1.野菜摂取量の調査結果
- 3.2.野菜不足による弊害
- 3.3.野菜不足を補う取り組み
- 4.栄養バランス
- 4.1.栄養バランスの調査結果
- 4.2.栄養バランスが崩れると
- 4.3.バランスの摂れた食事を
- 5.スマートライフプロジェクト
- 6.まとめ
従業員の健康づくりには食事が肝心
従業員の食生活改善は、健康経営において重要な取り組みのひとつです。
食生活の乱れは従業員の健康に悪い影響を及ぼすだけでなく、企業にとってもマイナスな影響があります。
栄養をきちんと取れていなかったり、食べ過ぎたり食べなかったりなどの不規則な食事を続けていると、体内の免疫機能が弱り、風邪を引きやすくなるほか、生活習慣病などの病気を招くリスクが高まります。
また、それらは企業にとって、医療費負担の増加や、欠勤・離職による労働力の低下につながるため、従業員の健康づくりは欠かせません。
農林水産省が実施した食生活に関する意識調査によると、「日頃から健全な食生活を心掛けているか」という質問に対し、男女全体の4人に3人が「心掛けている」と答えています。
しかし、性別・年齢別に見てみると、20代~40代の男性の約50%、20代女性の約40%が「心掛けていない」という結果となりました。女性よりも男性の方が食生活への意識が低く、なかでも20代の若い世代は顕著となっています。
(出典:農林水産省「現在の食生活について」)
この結果からも、企業は従業員の食生活改善を後押しする必要性が高いといえます。従業員の食生活を整えることで、風邪や病気による欠勤を防止できるほか、生活習慣病から起因するメンタルヘルスなどのリスク回避にもつながります。
労働力の確保や生産性を向上するためには、従業員が健康であることが第一です。健康経営の一環として、従業員の食生活改善に目を向けてみましょう。
朝食の摂取
朝食は、1日を元気に過ごすための重要なエネルギー源です。
特にブドウ糖は脳の働きを活性化してくれるため、朝から仕事に集中するためにも重要な栄養素といえます。また、人間には体内時計と呼ばれる体温やホルモン分泌などのリズムが備わっています。体に朝がきたことを知らせるためには朝食、夜には夕食というように、食事のリズムを整えることが大切です。
朝食を抜く人の割合
平成29年、農林水産省は全世代の男女1,874人に対して朝食摂取頻度調査を行っています。
その結果によると「ほとんど食べない」と回答したのは全体の7.2%、20~39歳の中間世代は12.3%と、年配の方に比べて比較的若い世代の方が、朝食を摂らない割合が多くなっています。
男女別で見てみると、20~39歳の若い世代で朝食を摂らないと回答したのは男性17.8%、女性8.3%と、男性が女性よりも圧倒的に多く占めています。
また、さらに若い20~29歳の世代で見てみると、朝食を摂らないと答えた人は、男性19.0%、女性13.4%と、割合が増加していることがわかります。
これらの結果をまとめると、20代の若い世代はほかの世代と比べて朝食を抜く人が多く、特に男性の方が食べない傾向にあります。
(出典:農林水産省「朝食摂取頻度」)
朝食を抜くとどのような影響があるか
朝食は、空腹を満たすためだけのものではありません。
人は、脳を働かせるためにブドウ糖を使用しますが、このブドウ糖は体のエネルギー源となるため、夜寝ている間にも消費され、朝には不足している状態となります。
朝食を抜いてしまうとブドウ糖が不足した状態が続くため、脳がしっかり働かず、集中力や記憶力の低下を招くといわれています。朝から元気よく仕事に取り組んでもらうためには、朝食の摂取でブドウ糖をしっかり補給することが大切です。
朝食を摂らない従業員への取り組み
「朝、時間がない」「胃が弱くて朝食べられない」など、朝食を摂らない理由は従業員によってさまざまです。これまで朝食を食べる習慣がなかった従業員のなかには、朝から食事を摂ることが難しいと感じる人もいるでしょう。
企業ができる取り組みとしては、会社で簡単な朝食が食べられる宅配サービスを導入する、また、朝から食べるのが辛いという人にも摂取しやすい飲食物を提供する、といった施策が挙げられます。コンビニよりも割安な価格で販売すると手軽に購入しやすいほか、無料サービスとして提供すると従業員の家計の助けにもなるため、従業員満足度向上につながります。
職場で朝食が摂れる環境を提供することで、従業員の集中力が高まり、パフォーマンス力の向上も期待できるでしょう。
野菜の摂取量
食生活の改善には、野菜の摂取が欠かせません。
野菜にはビタミンや食物繊維などの健康に有益な栄養素が豊富に含まれているため、毎日欠かさず摂ることが望ましいとされています。
野菜摂取量の調査結果
我が国における1人あたりの野菜消費量は、年々減少が続いています。
厚生労働省が定めた“健康日本21”では、健康維持に最適といわれている野菜摂取目標は1日350gとされています。しかし、すべての世代においてその基準を下回っており、国民全体の平均野菜摂取量はわずか290gほどしかないという状況です。
なかでも若年層の摂取不足は目立っており、サプリメントや栄養補助食品などにより栄養補給をする人も見られます。
平成29年に発表された厚生労働省の“国民健康・栄養調査結果”によると、野菜摂取量の平均値が最も高かったのが60~69歳で、男性318.2g、女性321.7gとなっています。
一方、20~29歳の平均値は60代と比べて大幅に下がっており、男性264.9g、女性218.4gという結果になっています。
(出典:厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要」)
野菜不足による弊害
野菜には、生活習慣病の原因となる“活性酸素”の発生を抑えるビタミン群やポリフェノールが含まれています。さらに緑黄色野菜にはβカロテンが豊富に含まれており、体内の発ガン物質の生成を阻止する働きがあるといわれています。
野菜が充分に摂れていないと、糖尿病や高血圧といった生活習慣病につながる可能性があるほか、それらが進行すると大腸がんや心筋梗塞、脳卒中などの重大な疾患のリスクが高まってしまいます。
生活習慣病を防ぎ、循環器系の疾患やガンに発展しないためにも、野菜を積極的に摂ることが大切です。なお、サプリメントで栄養素を摂るよりも、野菜を食べた方が疾病の予防効果が高いことがわかっています。
野菜不足を補う取り組み
若い世代を中心に野菜不足が目立つなか、コンビニ食やインスタント食品で食事を済ませてしまう人が多く、さらに野菜不足に拍車をかけている状況といえます。
企業ができることとしては、社員食堂の導入によって野菜を豊富に取り入れた昼食を提供するほか、野菜ジュースや野菜を使ったスムージーなどを低価格で提供するという取り組みが挙げられます。
食堂の設置が難しい場合は、オフィスに冷蔵庫を設置したり、野菜サラダやフルーツなどの宅配サービスを依頼したりというのもひとつの方法です。
企業が価格の何割かを負担することで、スーパーやコンビニで購入するよりも手に取りやすく、自然と野菜が摂れる環境へとつながります。
栄養バランス
食品には、それぞれ含まれている栄養素が異なります。炭水化物や脂質、たんぱく質をはじめとする五大栄養素のほかに、栄養素の働きによって分類した三色食品群、六つの基礎食品群などがあります。
食生活改善には、これらの食品をバランス良く摂ることが望まれますが、忙しい現代人にとって毎日栄養バランスの摂れた食事を摂ることは大変でしょう。つい時間がないからといってパンやご飯だけで済ませてしまう人もいるのではないでしょうか。
栄養バランスの摂れた食事は、体を健康にシフトし、生活習慣病を予防するためにも大切です。
栄養バランスの調査結果
農林水産省が全世代の男女1,874人に対して実施した“食育に関する意識調査”の報告によると、「主食、主菜、副菜をそろえて食べることが1日2回以上ある」と答えた人は全体の59.7%となり、「ほとんど無い」と回答したのは6.2%となりました。
しかし、年齢別で見てみると20~29歳の若い世代については「ほとんど無い」の割合が多くなっており、男性12.7%、女性17.1%と、特に女性の方が栄養バランスに配慮した食生活ができていないことがわかります。
また、「栄養バランスに配慮した食事を増やすために必要なこと」に関しては、最も回答が多かったのが「時間があること」となり、そのほかにも「手間がかからないこと」や「食費に余裕があること」という意見が挙げられました。
現代社会に生きる人たちにとって、食生活の改善に必要なのは手軽さなのかもしれません。
(出典:農林水産省「現在の食生活について」)
栄養バランスが崩れると
野菜の摂取不足や脂質の過剰摂取というように、栄養バランスが崩れてしまうと、メタボリック症候群や高血圧、糖尿病、貧血などの生活習慣病を招くリスクが高まります。
食品に含まれる栄養素はそれぞれ体内の働きが異なるため、偏らないようにバランスよく食べることが大切です。生活習慣病が増加すると、医療費負担が増大するなど、企業にとっても大きな影響を受けかねません。
ただし、栄養素を摂り過ぎると体の不調につながる可能性があるともいわれています。大量に食べればよいというものではなく、1日の摂取量に相応しい食事を摂ることが大切です。
バランスの摂れた食事を
上述の調査結果を総合的に見てみると、若い世代を中心に、食事に対する関心が低いことがわかります。20~30代の従業員が多い職場においては、食事による健康経営のアプローチが不可欠です。
しかし、仕事が忙しく食事にまで手が回らなかったり、単身世帯ではコンビニやファーストフードで食事を済ませてしまったりと、栄養バランスの摂れた食生活が難しい人もいるでしょう。
企業側の対策としては、まず従業員に食事と健康の関連性を理解してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。食生活の改善によるメリット、デメリットを正しく理解できる研修やセミナーを開催したり、一人暮らしでも簡単にできるクッキングスクールを設けたりするのもひとつの方法です。
スマートライフプロジェクト
食生活の現状として、野菜不足や食事に関する意識があまり高くないということがわかりました。
そんななか、政府が実施しているのが、国民全体の健康維持を目標とした“スマート・ライフ・プロジェクト”です。
「健康寿命を延ばしましょう」をスローガンとし、食生活や運動、禁煙の3つの分野で健康促進のための呼びかけを行っています。健康経営に取り組む企業において、この運動は大きな指針となるだけでなく、具体的なアプローチ方法を考えるうえでも役立てられそうです。
「健康経営に取り組みたいけれど、何から始めたらいいのかわからない」という企業は、当プロジェクトの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
食生活の改善は、従業員の健康に直結する取り組みです。
今回挙げた各調査においても、特に20~30代の若い世代の食生活の意識レベルが低くなっており、時間が無い、手間がかかるといった理由から整った食生活ができていない状況です。
企業ができることとしては、バランスのとれた食事を提供する社員食堂や冷蔵庫の設置をはじめ、安くて食べやすい(飲みやすい)野菜サラダやドリンクの提供などが効果的といえるでしょう。また、社員全体の健康意識を高めるために、健康に関する研修やセミナーの実施も重要です。
どのような施策を導入するかは、政府が策定している“健康バランスガイド”を参考にするのも良いでしょう。